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 今月初め、都内で開催されたモノづくりの祭典「Maker Faire Tokyo」。電子工作やロボットなど、あらゆるジャンルのテクノロジーとアイデアが詰まった作品が一堂に集結したこのイベントのライブステージに突如登場した4人グループが注目を集めていた。

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 彼らの手には、古い扇風機を改造して作った楽器が握られており、演奏を始めると、エレキギターのような音色が鳴り響いた。また、和田氏が出展したブースには、ブラウン管テレビを櫓のようにして、その周りで盆踊りをしている人たちが。この様子を見ていた来場者の人からは、「見ていてめちゃめちゃ面白い。だいぶ異質な空間だ」「音が出ているのが不思議」といった声が上がる。

 この不思議な楽器たちの生みの親が、アーティストでミュージシャンの和田永氏。1987年、東京都に生まれ、「産卵家」を自称する。作曲家でシンセサイザー・アーティストの故・冨田勲氏から影響を受けたといい、2009年から古いブラウン管テレビを楽器にして演奏を開始。廃棄されれば家電はただのゴミだ。しかし和田氏は「テレビやラジオなど、あらゆる電化製品を電子楽器として蘇生させようとしている」と話し、楽器として蘇った家電を演奏するプロジェクト「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」を展開している。"古家電"から発せられる音について和田氏は「電気的に歪んだサウンドに妖怪感を感じる。妖怪が"ワーッ"と呻いているような」と表現する。

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 こうした活動から「第13回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞」を受賞、「ISSEY MIYAKEパリコレクション」でも音楽担当を7回務めている。コラボレーションのオファーも多い。

 和田氏の部屋を尋ねると、蛍光色の縞模様が表示されているブラウン管を3つ並べた「ブラウン管小太鼓」が。パーカッションのように叩くと、身体を通して静電気を拾い、腰にはさんだコイルを通してギターアンプから音が出るという仕組みだ。

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 古い扇風機を改造した「扇風琴」は、「羽の代わりに円盤がついているが、外側と内側で円盤の穴の数が違う。後ろからライトを当てて、回転した時に光が点滅するが、その点滅を電気の波に変えて演奏する」(和田氏)。センサーがキャッチした光を電気信号に変換することで音が出る仕組みだ。狙った音を出すため、数カ月に及ぶ試行錯誤があったという。

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 楽器の演奏経験はあるものの電気や機械関係などテクニカルなことは全部独学だという和田氏。エンジニアなどはSNSなどで募集、い今や中学生から社会人まで幅広い世代の人々が和田氏のプロジェクトに参加している。親子で参加、新しいオリジナル楽器を試作している男性も。

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 そんなプロジェクトのメンバーたちは「和田氏のアイデアの豊富さは天井知らずだ」と口を揃える。「和田さんの作るものはその場にいないとわからない」「少年のような人。止まっていることがない。いつも踊っているというか、アイデアが尽きない」。

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 和田氏のインスピレーションは、いったいどこから湧いてくるのだろうか。先月、和田氏はメンバーらと共に、群馬県前橋市にある産業廃棄物のリサイクル業者・株式会社ナカダイが運営する『モノ:ファクトリー』を訪れた。ここで使われなくなった古いコピー機を見つけた和田氏は、「これでDJしないとダメでしょ」とメンバー男性に嬉しそうに呼びかけた。「スキャンして往復していくという動作から応用できそうな気がする」。直接モノに触れることで、インスピレーションが溢れてくるようだ。

 古家電に夢中になったきっかけについて和田氏は「衝動に近い。テレビの砂嵐とかラジオのノイズに、自分が知らない異世界の魔物が住んでいて、その世界とひょっとしたら繋がっているかもしれないと。カセットテープがバグったりして音がヨロヨロになった瞬間に『これだ』と思った。その音色がまさに魔物の世界を表現できる楽器として、ものすごくしっくりきた」と説明する。

 古家電を改造して初めて製作した楽器は、オープンリールを使用したものだった。「モーターが壊れていて、手で触れると、ピュワーンという独特のサウンドが鳴った。これは異世界と通信できる楽器なのではないかと思った」。

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 DJとしても活躍しているふかわりょうは、スタジオで和田氏の生演奏を聴いて、さらに共演も。「涙をこらえていました。"世界の武器を楽器に"ということを言った方がいた。私は夢の島に大量に積まれた廃棄物が全て楽器になり音を奏でだしたら大変な世界だなと思っていた。それをまさに現実に!」と感激しきりの様子だった。

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 和田氏は今、これまでの活動の集大成となる大規模な"祭典"「電磁盆踊り大会」計画、開催のための資金をクラウドファンディングで募っている。独特の世界観、取り組みに今後も注目が集まりそうだ。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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