“世紀の一戦”とも呼ばれたボクシングマッチ、フロイド・メイウェザーvsコナー・マクレガーの12回戦は、メイウェザーの10ラウンドTKO勝利という結果に終わった。
一度は引退したとはいえ、ボクサーがMMAファイターにボクシングルールで勝ったのだから、当然の結果とも言える。だが、試合序盤に見せたマクレガーのアグレッシブな闘いぶりは充分にファンをエキサイトさせてくれた。
何より、この試合が実現したことそのものが快挙だと言っていい。メイウェザーはボクシングで無敗のまま世界5階級制覇を達成した。マクレガーはMMAの最高峰・UFCで2階級同時にタイトル獲得。UFC初のNY進出となるマディソン・スクエア・ガーデン大会でメインを張ったのも、ファイトマネーだけで100万ドル以上を最初に稼いだのもマクレガーだった。
無名時代は生活保護手当をもらっていたというアイルランドの格闘家が、ここまでのし上がったのだ。しかもマクレガーは、強烈な打撃だけでなく舌鋒でもファンを魅了した。このメイウェザー戦に向けても、ボクシング界最大の大物の一人に対してまったく臆することがなかった。
公開記者会見では「F××K メイウェザー!」を観客とともに連呼。しかも着ているスーツのストライプにも、小さく「F××K」と入っているこだわりようだ。そうやって騒ぎに騒ぎ、試合を盛り上げるのがマクレガーのスタイル。その渦はUFCを席巻し、さらには今回、ボクシング界をも巻き込んだというわけだ。
タイトルマッチではない試合、ましてマクレガーはボクシングデビュー戦。良識派のファンからすれば取るに足らない、金儲けのための闘いに見えたかもしれない。しかしそういった人たちも含め、誰もが気になる、話題にせずにはいられない試合を成立させたマクレガーとメイウェザーは、やはりとてつもない選手だと言わなければならないだろう。そもそも、弱い選手には魅力がないし、魅力がない選手が騒いでも渦を巻き起こすことはできない。
10年、20年たって、この試合はあらためて「よく実現したな、こんな凄いこと」と言われるようになるはずだ。我々はそんな時代に、リアルタイムで立ち会えているのである。
photo:(C)DAZN