先日、6大会連続となるワールドカップ出場を決めたサッカー日本代表。オーストラリアとの大一番で先発に抜擢され、ゴールで勝利に貢献したのは、22歳の浅野拓磨、21歳の井手口陽介という若手選手だった。本田圭佑や香川真司のポジションを脅かす新世代の台頭は、サッカー界の明るいニュースとして伝えられた。
実はフットサル界にも、浅野や井手口のようなサクセス・ストーリーを描く選手がいる。
2014年に高校生Fリーガーとしてデビューして以来、新人賞、日本代表と駆け上がってきた、清水和也だ。フウガドールすみだの弱冠20歳のゴールゲッター。彼は今、「日本の未来を背負う選手」といわれている。
多くの選手は、高校や大学までサッカーを続けた後に、競技フットサルと出会う。日本最高峰に位置付けられるFリーグでも、現状は仕事と掛け持ちでプレーを続ける選手が大半を占める。だからこそフットサルは、プロの夢を断たれたサッカー選手が、大好きなフットボールを続けられる重要な選択肢となっているのだ。
ただ清水は、中学生でフットサルを始めた稀有な存在。高校進学後も続け、2013年の高校2年の秋、フウガドールすみだの須賀雄大監督と運命的な出会いを果たした。清水のポテンシャルを見込んだ須賀監督は、手始めに彼をセカンドチームへと招き入れた。清水の運命が、大きく動き始めた。
そこからの清水は、一気に階段を駆け上がって行く。
移籍からほどなくして、足首の骨折という全治半年の大怪我を負ったものの、清水はそれさえもポジティブに捉えた。リハビリと同時に肉体改造に励み、そして2014年9月、17歳でFリーグデビュー。数試合後に訪れた彼の初ゴールは、当時のFリーグ最年少得点記録となった。そして5試合目、リーグを7連覇中の“絶対王者”名古屋オーシャンズを相手に、圧巻のハットトリック。デビュー年のインパクトは絶大だった。
清水がすごいのは、日本人離れしたシュートセンスと、その技術を発揮できるメンタリティー。
対峙した選手は口々に、「やっかいな若い奴が出てきた」と話した。「打つかどうか迷ったら入らなくなる。だから五分五分でも打つ。相手に気持ちで負けないように、とにかく自分でいくと決めたら、なりふり構わずいく」。
清水自身、「若手だから」という遠慮は微塵もない。それはまさに、浅野や井手口のようでもある。
「サッカーW杯最終予選のUAE戦で、初出場初先発の大島僚太選手が、最初のチャンスでパスを選んだ。でも僕は、外してもいいから、打つ姿勢が大事だったんじゃないかなと感じて。そのひとつのプレーで選手自身のその日のメンタルと、日本代表の姿勢が決まっちゃうので。誰がなんといおうと、打つんです」
2015シーズンに新人賞、2016シーズンにチーム内得点王。2015年には日本代表にも選ばれた。そして今シーズン、清水はクラブで初めてとなる「プロ契約選手」となった。
プロとは、よりシビアに評価される世界。期待を背負った20歳のアタッカーへの期待と重圧は、軽くない。でも清水はやっぱり、そんな状況さえも前向きに捉える。というよりも、ブレずに突き進む。
テンションコーチ・金川武司は最近、清水の自主練習に付き合いながら、こんなことを感じたという。
「やりながら『楽しい』ってずっといっていた。ハードななかでも楽しさを芯から持っている。本当に厳しいけど、楽しそうにやっている」
フットサルを楽しむ。まるで無邪気な子供のように、ボールを追い続ける。できそうでできないことを、ずっとやっている。清水和也、20歳。彼のサクセス・ストーリーはまだ、始まったばかりだ──。
清水がプレーするフウガドールすみだは9日の第15節、難敵・アグレミーナ浜松とホームで対戦。その模様はAbemaTV(アベマTV)のSPORTSチャンネルで17時15分から生中継される。
文・本田好伸(futsalEDGE)