開幕から1巡目の11試合を全敗で終え、ダントツでリーグ最下位にいたヴォスクオーレ仙台。だが、第12節のデウソン神戸戦で初勝利を挙げると、クラブ初の3連勝を飾った。
もはや、仙台はFリーグの対戦相手にとって「勝ちが計算できるチーム」ではなくなりつつある。その要因となっているのが、今シーズン途中に加入し10番を背負うスペイン人、ノエ・パルド・カルボ、通称ノエだ。
スペイン北西部の港町ラコルーニャ出身のノエは、192cm/90kgという恵まれた体格を武器にスペイン、ハンガリーなどの1部リーグで活躍。仙台に来る前は4年間、ポルトガル1部でプレーしリーグ優勝も経験している。
欧州の第一線で活躍していたノエが、仙台への移籍を決めたのは「日本という国がどんな所なのか興味を引かれた」からだった。
世界のトップレベルで戦い抜いてきただけあり、そのプレーのクオリティは確かなものだ。ピヴォのポジションで、190cmという長身を活かした懐の深いボールキープを見せる。
また、「自分は常に2つ3つ先を読んでプレーしている」というように、ボールを持っていないときのフリーランニングや、パスを受ける前の相手との駆け引き、準備などの質も非常に高い。
実績・実力ともに十分なノエだが、Fリーグでのプレーについては「これまでのキャリアで一番難しい」と感じているという。それはなぜなのか。
「スペインやポルトガルはもちろん、ハンガリーのチームも含めて、これまでに自分がプレーしたチームはすべて完全なプロチームだった。ところが、今のチームではプロは我々外国人3人だけで、日本人の選手たちはみんな仕事をしながらプレーしている。もちろんそれはわかっていたことなんだけど、初めての経験なので正直戸惑うことも多いんだ」
プロとアマという契約形態の違いが、ノエにとって“見えない壁”となって立ちはだかる。
「アマチュアの中でも、例えば(ペスカドーラ)町田とかはフットサル関係の仕事に就いている選手が多いと聞いたけど、仙台の中にはフットサルとまったく関係のない仕事をしている選手もいる。オフィスで8時間仕事をしてから練習に来る彼らに、我々と同じレベルを要求するのは酷だよ」
初めて経験する環境での難しさを語るノエ。しかしそんな歯がゆさを感じながらも、「僕たち外国人選手がその環境にうまく合わせていかないといけない」と前向きだ。
「現状では上位を狙うのはすごく難しいと思うけど、トレーニングを重ねて少しずつ良くしていきたいね。僕はプロだから結果を示さないといけないし、チームを勝たせるためにここへやってきたから。今季もまだ半分残っているし、この環境の中で自分に何ができるかを追求していくつもりだよ」
欧州から遠く日本へやってきたノエ。日本の環境に戸惑いながらも、仙台を強くしようと試行錯誤を続けている。世界のトップレベルを知る一流選手は、日本の地でどんな足跡を残すのだろうか。
ノエがプレーするヴォスクオーレ仙台は29日(金)の第19節でフウガドールすみだと対決。AbemaTV(アベマTV)のSPORTSチャンネルで19時15分から生中継される。
文・福田悠(futsalEDGE)