タイトル通算98期。これは羽生善治二冠(47)が誇る将棋界の偉大な記録の一つだ。タイトル戦の奪取・防衛回数をそれぞれ「1」として積み重ねた数字で、2位は昭和の大名人・大山康晴15世名人の80回、3位は中原誠十六世名人の64回。現役では谷川浩司九段の27回、渡辺明竜王の19回が続くだけで、圧倒的な数字を残している。その羽生二冠がこのたび、竜王位への挑戦を決めた。
将棋のタイトルには、通算○期、連続○期など輝かしい獲得数を残した棋士には引退後に永世という称号で呼ばれるようになる。羽生二冠はもう一度竜王位を獲得すると「連続5期もしくは通算7期」の規定に従って永世竜王の称号を名乗る権利を得られる。羽生二冠は今年新設された叡王と竜王以外の6タイトルでは永世を名乗る権利を持っており、今度竜王位を獲得すれば前人未到の七大タイトルでの永世称号を与えられることになる。
羽生二冠は現在、若手のホープ・中村太地六段を相手に王座戦の防衛戦を戦っている最中。そして竜王戦の挑戦を決めたこともあり、王座位の防衛、竜王位の奪取と続けばタイトル獲得100回と7大タイトル永世称号の獲得「永世七冠」という2つの大記録を同時に達成することにもなる。
ここまでの道のりは決して楽ではない。タイトルを保持、さらには挑戦するとなれば、神経をすり減らす対局が、次々とやってくるからだ。今夏の羽生二冠の対局日程を確認してみた。まず、7月は対局数が8(事前収録のテレビ放送分含む)。そのうち斎藤慎太郎七段との棋聖戦五番勝負が2局、菅井竜也七段(当時)との王位戦七番勝負が2局含まれている。王位戦七番勝負は2日制なので、日数としては10日間だ。
タイトル戦は日本各地で開催され、前夜祭への出席などもあることから、対局の前後1日は新幹線などで移動もすることになる。さらに竜王戦の決勝トーナメント(持ち時間各5時間)2局と順位戦A級1局(同6時間)と、長時間の対局が続いた。8月もかなりタイトだった。9対局のうち、2日制の王位戦七番勝負が3局。その間に、竜王挑戦を決める大事な挑戦者決定三番勝負も2局あった。
タイトル獲得99期目がかかる王座戦は五番勝負で現在2連敗。中村六段相手に、徳俵に足が掛かっている。注目の第3局は10月3日開始だ。フルセットにもつれ込めば、第5局は10月17日に行われる予定となっている。
そして永世位をかけた竜王戦は第1局が10月20、21日に行われる。現王座として防衛しつつ、挑戦者として竜王のタイトルを狙う。大記録を目前にした羽生二冠の今後の戦いに注目だ。【奥野大児】
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