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ドラマに映画にCMに引っ張りだこの菅田将暉、韓国映画『息もできない』の監督・主演で注目を浴びたヤン・イクチュンのW主演で、寺山修司の原作に挑んだ『あゝ、荒野』(監督・脚本:岸善幸)は、格闘技ファンにも必見の作品となっている。

本作の見どころの一つは、作品の柱となるボクシングの描写が徹底的にリアルだという点だ。境遇も性格もまったく異なる沢村新次(菅田)と二木建二(ヤン)の2人が、今にも潰れそうだったボクシングジムに揃って入門することによって大きく進み始めるというのが本作のストーリー。

2人はそれぞれにのっぴきならない事情と、拳によってしか証明できないものを抱えてトレーニングを積み、プロボクサーとしてデビュー。闘いを重ねて、その先に待っていたのは……という展開なのだが、全編にわたるボクシング描写のリアルさは、長く観戦しているボクシング・ファン、格闘技ファンが見ても唸ることだろう。

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ユースケ・サンタマリア演じるジム会長、でんでん演じるトレーナーのもとでのトレーニングメニュー、プロテスト受験風景、試合会場での準備や試合の様子には、過度な誇張やご都合主義的な演出は一切ナシ。ロケ地も後楽園ホールにディファ有明、新宿FACEといったおなじみの会場や有名ボクシングジムなどが使われているし、リングアナもボクシング興行ではおなじみの冨樫光明氏が“いつもの名調子”を披露している。

そして何と言っても、主演の菅田、ヤンの闘いぶりだ。ともにボクシングには縁がなかったにもかかわらず、エディ・タウンゼント賞の受賞経験もあるボクシングトレーナーで俳優の松浦慎一郎氏の指導を受けて猛特訓。菅田の食らいつきようと吸収力は松浦氏も舌を巻くほどで、ドラマの盛り上がりとともに熱くなっていく彼らのファイトは、まさにリアルな迫力に満ちている。なお、松浦氏も短いながら印象的な役どころで出演している。

本作には主要キャストの対戦相手として現役格闘家が出演している。一人はキックボクシング・NJKFスーパーバンタム級王者の前田浩喜。前述の松浦氏がボクシング・トレーナーを務めている縁から出演した彼は菅田将暉と拳を交えている。もう一人はDEEP等で活躍する総合格闘家の宮川博孝。ヤン・イクチュン作品のファンだという彼は、劇中でもヤンとリング上で対峙している。二人とも見事な●●っぷり(劇場で確認を!)を披露している点にも注目だ。

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第一部が10月7日、二部が10月21日に連続公開される本作は、合わせて304分の超大作。しかし冒頭から息をつかせぬ急展開の連続と、濃密に絡まり合う人間ドラマによって、まったく長さを感じさせない。そこに迫力のボクシング・シーンも加わって、濃密さと疾走感に溢れた怒濤の作品に仕上がっている。

制作・配給:スターサンズ (C)2017『あゝ、荒野』フィルムパートナーズ

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