王者・安保璃紅vs挑戦者・郷州征宜のKrush -60kgタイトルマッチ(10月1日、後楽園ホール)は、判定2-1の接戦を郷州が制し、新チャンピオンとなった。
試合は序盤から安保がリード。ステップを使って距離を取りながら、的確にパンチをヒットさせていく。このあたりのセンスはチャンピオンならでは。以前はダウンの応酬からノックアウト勝ちを飾ったこともある安保だが、この初防衛戦では相手の持ち味を封じにきた。
対する郷州は常に前進。攻撃が空回りする場面もあったが、コーナーに追い込んでの連打などで安保の一方的なペースにはさせない。耳が聞こえないというハンデを持ちながらトップ戦線で闘い、このタイトルマッチにこぎつけた執念を感じさせるファイトだ。
以前、主戦場にしていたRISEではタイトルマッチで勝てず、Krushでも王座決定トーナメントで一度は安保に敗れた。それでも腐らず練習を続けていたことで、欠場者が出た挑戦者決定トーナメントに出ることができた。そしてチャンスをものにしてのこの試合だ。劣勢の展開にも、郷州にあきらめるという選択肢はなかった。
そして最終3ラウンド、カウンターで郷州のパンチがヒットし、安保が尻餅をつく。これをレフェリーがダウンと判断した。安保は呆然。はっきりダメージが見て取れるダウンではないため、微妙な判断だったとも言える。それでも郷州がポイントで逆転したことは事実だった。アグレッシブに前に出続けた、すなわちKrushらしい闘いを貫いたことが運命を引き寄せたのか。
悲願の王座獲得を果たした郷州は「毎回、招待している」という耳が聞こえない子供たちのため手話通訳付きで「見ててくれたかな」。同じ境遇の子供たちに、諦めなければ夢は叶うというメッセージを伝えたいという思いが届いた瞬間だった。
「僕は子供の頃から無理かなと考えがちでしたけど、こうして健常者の世界でチャンピオンになることができました。諦めなければできる、(子供たちにも)努力して結果を出してほしいです」
感動的な戴冠劇だったが、これで終わりではないとも郷州。次の目標はK-1。来年3月のさいたまスーパーアリーナ・メインアリーナ大会で、さらに成長した姿を見せたいという。
「Krush.81 10.1 後楽園ホール 濃縮編集版」は10月2日(月)21:00~AbemaTVで放送