リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドを知らない人はいないだろう。でも日本のフットサル界には、彼らに勝るとも劣らない、すごい外国人選手がいる――。
バルセロナのメッシ、ルイス・スアレス、ネイマール(現在はフランスのパリ・サンジェルマンに移籍)の「MSN」、ギャレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、C・ロナウドの「BBC」。圧倒的な攻撃力を持つ彼らを、人々は、頭文字をつなげてそう呼んでいる。
日本最高峰のフットサルリーグ、Fリーグで首位に立つ名古屋オーシャンズにも、そんな攻撃力を備える強力なトリオがいる。ヴァルチーニョ、ルイジーニョ、ラファという、3人のブラジル人だ。彼らは、王座奪還を狙うクラブが今シーズン獲得した、特長の異なるストライカー。シーズンが終わる頃には、彼らはきっと「WLR」と呼ばれているだろう。
では彼らはいったい、どのくらいすごいのか。
サッカーとフットサルはそもそも似て非なるスポーツだが、こんな数字がある。「MSN」は、2014年からの3シーズン通算で364ゴール、「BBC」は、268ゴールを挙げてきた。彼らの出場試合数と得点数を平均すると、「MSN」は1試合で0.8点(平均121点/148試合)、「BBC」は1試合で0.7点(平均89点/128試合)という数字がはじき出された(なお、リーグ戦や国内カップ戦、チャンピオンズリーグなどをすべて含む)。
一方で、名古屋の「WLR」は今、こんな数字を残している。
ヴァルチーニョ:15点/15試合
ルイジーニョ:17点/17試合
ラファ:14点/18試合
平均:0.9点/1試合
もう一度断っておくと、そもそもサッカーとフットサルはまったく違う。ただそれでも、1試合で約1点のペースでゴールを量産している彼らのすごさが、少しでも分かっていただけるだろうか。実際に、彼らが今シーズン加わってから、3人のうち誰も得点していないのはわずか1試合のみ。ヴァルチーニョとルイジーニョは、デビュー戦から7試合連続で“アベックゴール”という、史上初の数字を残した。3人がそろって決めた試合も5試合ある。
バルサやレアルがそうであるように、スペシャルな選手がそろっているということはそのまま、チーム自体が強いことを意味する。名古屋も今シーズン、強力な助っ人選手たちが活躍していることで、チームには様々な相乗効果がもたらされている。
名古屋はFリーグで唯一、所属する全選手が「選手だけ」で生活できる、完全なるプロクラブ。とはいえ若手選手は、技術面やプロ意識を含む精神面でトップ選手に及ばないことも多い。しかし日々、世界水準の選手とともに練習し、一緒にピッチに立つことで、必然的に彼らは成長を遂げ、そうした底上げがさらに、中堅選手、ベテラン選手を突き上げていく。名古屋は今、彼ら「WLR」の存在によって、すべてがうまく回り始めているのだ。
でも名古屋がここにたどり着くまでには、大きな苦難があった。
リーグが創設された2007年から一度も王座を譲らず、前人未到の9連覇を成し遂げたものの、10連覇の懸かった昨シーズンついに、その座を奪われてしまったのだ。ベテラン選手の引退や外国人助っ人の開幕前の離脱、新監督による新たなチームづくりなど、様々な要因が重なる中で、世代交替を図った新生・名古屋は、結果を残すことができなかった。
王者は、王者であり続けなければならない――。プライドを汚された屈辱的なシーズンを経て、クラブは今シーズンもう一度、頂点に立つことを至上命題に掲げたのだ。名古屋が勝ち続けること。それこそが、フットサル界の未来の栄華につながると信じて。
名古屋が、日本はおろかアジアや世界に誇れるトリオをそろえたことで、今シーズンのFリーグは再び、“名古屋1強”に戻ろうとしている。ヴァルチーニョは、誰よりも得点嗅覚に優れる右利きのストライカー。ルイジーニョは、スピードに乗ったまま正確無比のシュートを打てる左利きのスナイパー。ラファは、味方を生かしながら、ゴール前で創造性あふれるプレーを見せる左利きのテクニシャン。いずれも、唯一無二の点取り屋だ。
Fリーグには、メッシにもクリロナにも負けない、スーパー助っ人がいる――。バルサの「MSN」、レアルの「BBC」を超える名古屋の「WLR」トリオに注目しよう。
「WLR」のいる名古屋オーシャンズは8日の第20節、5位のフウガドールすみだと対決。その模様はAbemaTV(アベマTV)のSPORTSチャンネルで13時45分から生中継される。
文・本田好伸(futsalEDGE)