連覇がかかる平昌五輪シーズンのグランプリシリーズ初戦・ロシア大会に、ソチ五輪王者・羽生結弦は攻めの姿勢で臨む。

(写真:西村尚己/アフロスポーツ

 ロシア大会の公式練習に臨んだ羽生は、フリーの冒頭で4回転ルッツに挑むことを明らかにした。ルッツは6種類のジャンプの中で2番目に難度が高く、4回転ルッツを跳べるのは世界でも限られた選手だけだ。昨季最後の試合・世界国別対抗戦の公式練習で4回転ルッツに成功していた羽生だが、今夏拠点のトロントで行われた公開練習の際には「跳べますし練習していますけれども、今は考えてないです」と話し、後半に3本の4回転を跳ぶという挑戦をまずは完遂したいとしていた。

 ロシア大会で4回転ルッツに挑むことにした理由について、羽生は今季初戦・オータムクラシックで「全力でできないことが集中を途切れさせると学んだ」ことを挙げている。9月・カナダで行われたオータムクラシックで、羽生はショートプログラムでは自身の持つ世界歴代最高得点を更新する圧倒的な滑りを見せたが、フリーではジャンプのミスが続き失速。右膝に違和感を抱えており、ジャンプの難度を落とした構成だったことが「思い切ってできない難しさ」につながったと羽生は演技後に振り返っている。

「悔しさは僕にとっては収穫でしかないので、この悔しさをしっかりと心にしまって、試合まで残しておいて、試合で爆発させられるようにしっかり練習してきます」

 悔しさによって得た「収穫」が、4回転ルッツだった。

 羽生は、自らの強みを「全部です」としている。スケート関係者の評価も高いスピン、幼い頃に特訓しクリケットクラブでの鍛錬でさらに磨きがかかったスケーティング、曲に入り込んでいくような表現力、長い手足を生かした美しい所作。羽生はオールラウンダーであり、全方位型のスケーターなのだ。しかし、羽生の強みはそれだけではない。五輪王者の称号に甘んじることなく、常に上を目指す姿勢だ。

 ロシア大会ではフリーで5種類の4回転に挑むネイサン・チェン(アメリカ)らが牽引し、男子シングルにおける4回転の数、種類は飛躍的に増えている。羽生は、その熾烈な「4回転競争」に一歩も退くことなく参戦してきた。羽生が世界歴代最高得点を保持しているのは、すべての要素が完成しており、出来栄え点が高いことが大きな要因といえる。考え方によっては、新しい種類の4回転に挑むことなく演技の完成度を上げることで勝負できるはずだ。だが、羽生は時にはブライアン・オーサーコーチと意見を異にしながらもなお、より難しいジャンプに挑む姿勢を貫いてきた。ロシア大会での4回転ルッツへの挑戦は、アスリート・羽生の根源的な向上心によるものなのかもしれない。

「守ること、捨てることはいつでもできる」

 攻めの姿勢でグランプリシリーズ初戦に臨むことを宣言した羽生。決して守勢には回らないデフェンディングチャンピオン・羽生結弦の2度目の五輪シーズンが、本格的に幕を開ける。

文・沢田聡子

 AbemaTVでは羽生結弦選手、樋口新葉選手らが出場するグランプリシリーズ・カナダ大会の模様を10月23日、24日に放送する。

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