将棋の23歳以下の若手棋士と40代のトップ棋士が7人ずつの団体戦で競う「若手VSトップ棋士 魂の七番勝負」の第5局が10月28日に放送され、八代弥六段(23)が森内俊之九段(47)に135手で勝利した。将棋界に吹き荒れる世代交代の風を表すように、団体戦の七番勝負で若手チームが負け知らずの5連勝。言葉にするのをためらう人も多かった「若手全勝」まで、ついにあと2つまで迫った。
次々と高い壁を乗り越えた4人に続き、チーム最年長の八代六段もしっかりと勝ちきった。序盤からお互いの駆け引きが見える戦いの中、中盤そして終盤と、じりじりと八代六段がペースを握った。「少しずつリードできているんじゃないかなという実感はありましたが。具体的に勝ちになったと思ったのは最後の最後です」と、苦しい戦いだったことを明かした。十八世名人の資格を持つ森内九段について「普段は穏やかですごく優しい先生という印象でしたが、盤を挟むと少し怖さを感じるというか、オーラを感じるところがあった」と、気圧されそうにもなった。それでも「自分も負けないで頑張ろう」と、着実に一手ずつ積み重ねた。
チームメイトからかけられたプレッシャーもあった。企画が始まる前のインタビューで「勝ち越せれば」と語っていた八代六段だが、自分の出番はなんと若手の4連勝で回ってきた。「(対局が行われた)一昨日くらいに4連勝と聞きました。ただただプレッシャーで」。自分だけ負けられないという重圧から解き放たれると「肩の荷が下りました。このメンバーの中で最年長でしたし」とホッとした表情を浮かべた。
世代交代がなるか、という大きなテーマを持って始まった今回の団体対抗戦。出現したのは、これ以上なく強烈な若手の5戦全勝という結果だ。残る対局はあと2つ。勝利を示す白い丸が7つ並ぶ時、将棋界の勢力図がはっきりと変わったことが、広く知れ渡る。
敗れた森内俊之九段のコメント 八代六段にきっちり指されたという感じです。手厚い着実な将棋という印象。将棋連盟の理事としては、若い棋士が活躍する機会が増えて、メディアでも取り上げてもらえる機会も増えて、そういう意味で将棋界全体では活気があって、ありがたいです。
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