11月12日のパンクラス・ディファ有明大会では、ミドル級タイトルマッチが行なわれる。チャンピオンはロッキー川村、チャレンジャーは新村優貴。1年前の王座決定戦と同じカードだ。新村は再起戦でKO勝利を飾り、リマッチの権利を掴んだ。
王者ロッキーはパンクラスでの試合自体も1年ぶり。その間、数多くのプロレスの試合を行なってきた。
川村はパンクラスで2階級制覇を達成、総合格闘技のフィールドで活躍してきたが、師匠・鈴木みのるには「プロレスの新弟子」として育てられたのだという。プロレスラーに憧れ、プロレスラーとして育てられた「川村亮」は、一時はパンクラスの社長も務めていたが、近年プロレスにも活動の場を広げるようになった。昨年、地元でのデビュー10周年記念興行で鈴木みのるに思い切り叩きのめされたことも。
その直後、リングネームを「ロッキー川村」に。リバプールの風になった山田恵一、あるいは南港に消えたグレート・ニタのごとく「川村亮は名古屋港に沈んだ」と言い、完全にロッキー化。プロレスでもボクシンググローブ着用でパンチのみの闘いを挑み、対戦相手に対しても記者会見でも「エイドリアーン!」を連発。その口調は羽佐間道夫による吹き替え版以外の何物でもない状態だ。
あふれんばかりのロッキー愛、スタローン愛で取材陣を置いてけぼりにするのは当たり前、プロレスでタッグを組んだ鈴木みのるにさえ「誰だコイツ呼んだのは!」と言われるほどの個性派すぎる選手に成長した。
その吹っ切れ具合がよかったのか、パンクラスでも王座に返り咲き。MMAの試合は久しぶりだが、日常すべてが強くなるきっかけだと言うスタンスは、やはりプロレスラーらしい。
そんなロッキーの防衛戦に、DDTのレスラー・坂口征夫もブログを通してエールを送っている。
もともと坂口がファイターとしてデビューしたのは、パンクラスのリング。「俺的『ロッキー』」と題したブログの投稿によれば、坂口は2006年9月のアマチュアマッチでプロ昇格を決めたが、その日のプロの試合で「PRIDE参戦していたデッカい黒人をぶっ倒したのが、川村亮」だった。そこから縁を感じているという坂口。自身の道場を持つようになり、団体の社長と道場の代表として付き合いを深めていった時期もあるという。
そして現在、坂口はDDTマットで大活躍中。そのDDTに、ロッキー川村も参戦するようになった。総合格闘技とは対極に見える“文化系プロレス”で再会することになったのは意外だが、しかしそれぞれがDDTでしっかり個性を発揮できている。
12日のタイトル防衛戦に向け「無事にタイトル防衛してほしい。/で、またDDTのリングで対峙できれば!」と坂口は記している。その思いはロッキーにも、ライバルにして盟友・アポロの声のように届いているはず。それぞれの歴史や背景を知れば知るほど、格闘技もプロレスも面白い。
文・橋本宗洋