11月12日に開催される「PANCRASE291」で行われるミドル級 キング オブ パンクラス タイトルマッチ、ロッキー川村vs新村優貴を前に、ロッキー川村の試合に臨む姿に密着した。
それまでパンクラスの選手兼、代表取締役など紆余曲折を経て総合格闘技とプロレスのリングで再び輝きはじめた36歳。ご存知ない人は驚くかもしれないがこのロッキー川村という選手、1年ほど前にスタローンの「ロッキー」が憑依したロッキー川村と名乗り始めてから何かが変わり始めたのだ。
昨年自身の本名、川村亮としてのデビュー10周年記念興行「川村SOUL」を開催した際に、対戦した鈴木みのるから「おまえ一瞬ロッキーぽかったぞ。ロッキー好きなんだからロッキーのなっちまえよ」という、いかにも言いそうな一言に衝撃を受け「ロッキー川村になるぜ」とその場で即答。話し方まで吹き替えの羽佐間道夫風にチューニング、結果的に大塚明夫か小山力也風の声のトーンだし、なぜボクシングではなく総合格闘技なのか?などツッコミどころ満載だが、そんなはったりも相まって1ランク上のチャンプの世界へと駆け上がった。
「ロッキー3でロッキーにアポロがステップを教える。リアルストーリーだ、今の打撃のスタイルというか打たれ強さというのは資源と同じで限りがあるんだ。パンチをもらわないように動くのも1つだし、強いパンチを打てるように練習するのも1つ、それが全部混ざり合ってロッキー川村のスタイルがある。」言葉の節々にロッキーから得た知見を織り交ぜながら自身の総合格闘技のスタイルに投影する、そんなやり方も成功の理由の一つかも知れない。
トレーニングパートナーを務める北岡悟も「以前よりイキイキしているんじゃないかと思う。格闘技的には何も変わりはありません。ただ格闘技は白黒出るものなので、昨年の新村戦でロッキー川村として勝ち負けを問われて、あそこで勝ったことが凄く大きかったと思う。」と振り返る。
「走ることに意味などないかもしれない、でもロッキーはひたすら走っているだろ」あらゆる理解不能なことも「ロッキーもやっているから」と愚直に実行するロッキー川村。以外にもこの思い込みは、今彼の推進力になっているようにも思える。
新村優貴は1年前にミドル級 キング オブ パンクラスのタイトルを争った相手との再戦となる、川村のロッキー化の肩を押した鈴木みのるは「全てが作り物。本当のあいつはどっか別の場所にいるんですよ。今やロッキーで認知されたものだから、一生懸命ロッキーを演じようとしている。」とノリノリの中、水を差すようなコメントを寄せているが、川村も「ロッキーはいずれ乗り越えるもの、乗り越えなければロッキー川村の今後はない」と語る。世間一般に言われるキャラチェンジとはまた違った意味でプロレスラーと総合格闘家という二足のわらじで成功を収めたロッキー川村、今後の活躍が非常に気になる選手であるのは確かである。