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12月13日に開催されたDDTグループのブランド・DNAの新木場1st RING大会で、同団体所属の鈴木大が引退試合を行なった。

鈴木はまだ27歳。キャリアも浅いのだが、プロレスと並行して続けていた福祉の仕事に集中するため、引退を決意したという。大好きなプロレスに甘えてしまわないよう、はっきりケジメをつけるための引退だ。

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ラストマッチではデビュー前、ケガで入院していた時に激励を受けた大家健(ガンバレ☆プロレス)との対戦が発表されていた。

しかし大会開始前、かつてDNAに所属していた中津良太(プロレスリングBASARA)がDNA時代のコスチュームで登場し、対戦をアピール。さらに梅田公太も「僕はDNAで唯一、鈴木さんとシングルやってないんで」と割って入り、結局シングルマッチを3連続で行なう「3人がけ」の引退試合に。

鈴木はDDTに入門したが、デビュー前から沖縄修行に出される。そこでマスクマンとしてデビューするも、“大社長”高木三四郎に存在を忘れられ、そのまま放置されてしまった。鈴木によると、その後DNA旗揚げで東京に戻ってきた際、「急に帰ってきて先輩なのか同期なのかも分からない僕を友だちだと思って仲良くしてくれた」のが中津と梅田なのだという。

そんな関係だからこそ、中津も梅田も厳しい攻めを見せた。決して大きな結果を残せたわけではないプロレス人生、最後に全力で闘う姿をファンに見せてほしいという思いからだろう。

中津戦は逆片エビ固めでギブアップ、梅田にはPKで3カウントを奪われた鈴木。マットに倒れこんだ状態のまま、最後の相手である大家を迎えた。

セコンドに回った中津、梅田の声に背中を押され、大家に立ち向かっていく鈴木。大家も鈴木のようにくすぶっていた時期が長いからこそ手を抜かない。序盤からフィニッシュ狙いにも思える逆エビ固めを見舞い、エルボー、張り手の打ち合いで真っ向勝負。そんな展開の中、鈴木は不恰好ながらも気合いだけは見せていく。最後は大家の「炎のスピア」でピンフォール。すべての力を出し切ったことは間違いない。

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「こいつはプロレスで何も成し遂げられずにやめるんです!」と厳しい言葉を浴びせた試合後の大家。それでも「人生の希望は失ってないはずです。これからの鈴木に期待してください!」とエールを送った。

鈴木は今年、栃木での地元凱旋試合をガンプロで実施したが、再び地元でリングに立つことは叶わず。引退セレモニーでは、大家に「言い訳すんな!」と怒鳴られつつ最後の挨拶を行なった。

「立派なプロレスラーではありませんでしたが、みなさんの前でプロレスができたことは僕の誇りです。僕はプロレスが大好きです!」

号泣し、マットに座り込んだままテンカウントゴングを聞いた鈴木を仲間たちが囲み、記念撮影。異色の経歴を持ち、実績以上に周囲に愛されたレスラーは、仲間に囲まれてレスラー人生を終えた。

文・橋本宗洋

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