将棋の女流棋士、飯野愛女流1級が進路を決める高校2年の時に、いきなり女流プロを目指すと宣言し、父でプロ棋士の飯野健二七段を驚かせたエピソードを明かした。
飯野女流1級はAbemaTV「花の三番勝負 白黒はっきりつけましょう」の第2局に登場。同じく父がプロ棋士である塚田恵梨花女流1級と対局する。どちらも家庭の中に自然と将棋が存在しているように思われるが、飯野女流1級が将棋の道を志すと決めた当時は、周囲を困惑させたという。
将棋にまるで触れていなかったわけではない。高校2年生の時、飯野女流1級はアマチュア8級だった。女流プロで最も低い段・級位は女流2級だが、それでもアマチュアでは二~四段相当とされている。高校生で既に女流プロとして戦っている将棋の世界において、高校2年生から志すというのは、険しい道であることは明らかだった。飯野女流1級も「これまで(将棋が強くなる)育て方もされてこなかったですし、本当に驚いていましたね。(進路が)『何で将棋なの?』っていう感じで」と、今では師匠となった父の様子を振り返った。
父・健二七段も「唐突なんですよ。どういうわけかパパと同じ将棋をやりたいって言い出して。え?って言いましたけどね」と、愛娘から発せられた女流プロ志望宣言のことは、明確に覚えている。「(将棋界の)大変さ、苦労さっていうのは、自ら味わっていますし、この厳しさを娘にさせるのかなっていう…」と、かわいい娘だからこそ茨の道を歩ませるには、戸惑いもあった。
宣言してからというもの、登下校の時間は詰将棋を解き、自宅兼道場では棋譜並べ。師匠となった健二七段からの指導の甲斐もあり、26歳で女流プロデビューを果たした。飯野女流1級も「師匠と仕事をするっていうのは1つの夢でもあったので、女流棋士になってよかったです」と、顔をほころばせた。また健二七段も「それはうれしかったですよ。正直言って」と、また父の顔に戻った。
父であり師匠である健二七段について、飯野女流1級は「師匠はあんまり好きじゃないですけど、父は大好きです」という。もともと好きな父親を後を追い掛け将棋の世界に飛び込み、師匠と弟子としては時としてぶつかるが、それでも日々家族からは見えないところで必死に戦ってきた姿を見ることができた。そんな父がより大好きになったから、あまり好きじゃない師匠のもとで、また必死に研究を積み重ねる。
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