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 尖閣諸島での緊張が高まっている。中国軍の艦艇と潜水艦が尖閣諸島沖の日本の接続海域を航行した問題で、その潜水艦が新型で攻撃型の原子力潜水艦だったことが新たに分かった。

 今回確認された新型の攻撃型原子力潜水艦は「商級(シャンキュウ)」と呼ばれるクラスのもので、射程540kmとも言われる長距離巡航ミサイルや、射程40kmの対艦ミサイルが搭載可能だという。また、映像では捉えられていなかったが、この潜水艦と共に中国軍の艦艇も侵入。これらが揃って尖閣諸島の接続海域で確認されるのは初めてだ。

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 中国問題評論家の石平(セキ・ヘイ)氏は「越えてはいけない一線を越えてしまったことの背後には、尖閣諸島を日本から奪いたい、そして軍事的圧力をかけたいこという狙いがある。習近平国家主席は自身の終身的独裁体制を目指しているので、それを強引に推し進めていくためにも、領土問題で強い姿勢を打ち出し、日本との争いにおいてより優位な立場に立とうとしているのだろう」と話す。

 今回、中国軍の艦船が航行した「接続水域」とは、領土から約22km外側にある領海のさらに外側の22kmの水域を差す。この外側に排他的経済水域があり、接続水域と排他的経済水域には航行の自由があり、領海にも害を及ぼさない限り航行できる「無害通航権」がある。

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 16日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した、元産経新聞の北京特派員でジャーナリストの福島香織氏も「年明け早々に強気な態度できたなと。習近平政権も本気になってきたなと思った」と話す。

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 「今回は攻撃型潜水艦が潜没航行した。無害通航の場合、潜水艦は浮いて通るが、潜れば攻撃の意思があると判断されても文句を言えない。また、接続水域まで留めているあたりが日本の出方を見ている感じもするが、領海に入れば日本も海上警備行動を取るかもしれず、そうなれば抜き差しならない関係になってしまう。日本はこれに対して然るべき態度を取らないと、次はもう一歩と、サラミスライスのように迫ってくるのが今の中国のやり方。2016年くらいから色々な形でやってきて、いよいよ潜水艦まで出てきたという感じ。日中友好改善の気配とは全く逆方向にいきそうだなという気がする」(福島氏)。

 静岡県立大学特任教授で軍事アナリストの小川和久氏によると、今回、海上自衛隊は最初から最後まで潜水艦を追尾しており、いつでも撃沈することができる状態にあったったという。

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 福島氏も「日本側は追尾できたから落ち着いていて余裕なのかもしれないが、中国が本気で尖閣を取りに来ていること自体にはもっと騒いでいいと思う。世が世ならこれで戦争が始まっていたかもしれない。しょっちゅう戦闘機が飛んでくるのにも、軍艦が入ってくるのにも日本人が慣れてきているというのが非常に恐ろしい」と警鐘を鳴らす。

 相次ぐ日本への挑発とも取れる行動に対し、菅官房長官は「中国に対しては11日、12日の2日に渡って外務事務次官から駐日中国大使に対して重大な懸念を表明し、厳重に抗議、再発防止を強く求めている。政府としては我が国の領土・領海・領空は断固として守り抜く。毅然としてかつ冷静に対処していきたい、こういう風に思う」とコメント、小野寺五典防衛大臣は「いたずらに事態をエスカレートさせることがないよう、冷静な対応を継続しつつ、尖閣諸島を含むわが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、引き続き警戒監視、情報収集等に万全を期す」と述べている。

 11日、外務省の杉山事務次官は中国の程永華駐日大使を呼び出し、重大な懸念を表明、抗議を行った。一方、中国外務省は11日、海軍の行動を正当化する声明を発表。「釣魚島(日本名は魚釣島)と関連の諸島は中国の固有領土で、中国の釣魚島に関する主権は十分に歴史と法理的な証拠がある」と述べた。また中国国防省は「中国軍艦の活動は正当な権利だ。悪人が罪をなすりつけ事実を歪曲している。強い不満を抱き、断固反対だ」(陸慷報道局長)と反発している。

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 「今は間違いなく日本が実効支配しているが、中国は"奪い返す""尖閣は日本に取られている"という表現を使っている。2022年になれば、日本が半世紀も実効支配を続けてきたことになり、日本の領土として国際社会の認識も定まる。中国はそれが怖い。だから中国は海洋国家として海軍を強化し、台湾、沖縄も取り戻すと主張している。習近平政権は「中華民族の偉大なる復興」を掲げ、アメリカと肩を並べるような大国になり、世界の舞台の中央に躍り出ると主張している。それは中国の領土が最も広かった清朝・乾隆帝時代をイメージしている。当然、沖縄も台湾も奪い返すし、南シナ海も内海。インドとの国境、最終的には外モンゴル、ロシアに奪われた領土も返してもらおうと思っている。そのために、6つの戦争のプランも持っている」(福島氏)。

 前出の石氏も、「尖閣諸島奪取のために、まず日本の実効支配を崩すことが狙い。そうすれば、日米安保が担保されなくなり、米軍の影響力も排除できる。その次の狙いは沖縄で、これも米軍を追い出すことが目的。そして太平洋を米中で分割するという野望がある」と話す。

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 東海大学海洋学部教授の山田吉彦氏によると、仮に中国の艦艇が領海に侵入した場合、海上警備行動が発令され、自衛隊の艦船が派遣される可能性がある。ただし武器等の使用は、正当防衛・緊急避難等の場合のみだ。

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 議論を聞いていた慶應義塾大学の若新雄純・特任准教授は「僕たちは"地球"という名の、ヤンキーたちが争う高校に通っているようなもの。隣にいる、喧嘩してでも番長になりたいヤツに対して"暴力はいけないと思います"とか"いや、本来は我が国固有の領土で…"といったところで、通じるのか。決して暴力は使わず、明け渡す、という選択を取るのか、決して勝てないけど、一目置かれて、なだめることができるような存在を目指すのか。"喧嘩は嫌だ"ばかり言っていても、"パン買ってこいよ!"みたいな存在になってしまうかもしれない。世界はそういう現実だということを議論しなければ行けないと思う。明治維新から敗戦までの間、"植民地になってもいい"というスタンスでいたとしたら、今の日本の平和や豊かさは無かったと思う。これからは、"なんでも良いや"と言っていると、この暮らしが保障されなくなってしまう気がする」と危機感を露わにした。

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 福島氏も「実効支配を守るといっても、挑発に乗って紛争になってしまえば国際社会がどう見るか。いくら自衛隊が精鋭揃いだと言っても、中国とのガチンコ勝負はできない。実効支配が揺らぐ、それが中国の狙い。国際社会を味方につけない限りはなかなか難しいまさに日本の胆力や戦略性が問われる。憲法、法律、国防が今のままでいいのか、タブー視せずに前向きに議論することがまずは重要だろう」と述べた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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