声優のオーディションにもかかわらす、声を聞かせることもなく、書類選考だけでライバルに合格通知が来て、主人公の岸田ケンゾウ(亀田侑樹)が憤慨する――。AbemaTVで放送されるドラマ『#声だけ天使』には、こんな場面が描かれている。良質な声の演技を求める声優ファンとしては、さすがにこれは大げさで、あくまでもドラマの演出であってほしいと願うが、声優に声以外の要素が求められていることは確かだ。 
 かつて声優は、表に顔を出すことはない「裏方」の仕事だった。洋画の吹き替えなどは昭和の時代から行われていたが、「せいゆう」と言えばスーパーマーケットの「西友」で、声優という職業があることさえ、あまり知られていなかったのだ。声優の演技を耳にしても、一般には「この外国人の俳優は、日本語がうまいねぇ」「アニメのキャラクターがしゃべっている」程度の認識だったのではないだろうか。