(大日本プロレスのマスコット「デスかもくん」と)
12月17日の大日本プロレス・横浜文化体育館大会では、橋本大地が鈴木秀樹を下し、BJW認定ストロングヘビー級王者となった。橋本真也の息子として注目され、それだけに風当たりも強かった大地。その戴冠を長年、プロレスを見続けてきたラッパー・サイプレス上野はどう見たのか。会場観戦の直後に聞いた。
(聞き手・橋本宗洋)
——今日のセミファイナルは鈴木秀樹vs橋本大地のストロングヘビー級選手権でした。上2つの試合に関本大介、アブドーラ・小林、伊東竜二といった選手がいなくても違和感がないのが凄いですね。
上野:変わっていってますよね、時代が。鈴木選手と大地選手なんて「今までとは違うものを見てる感」が凄かったし
——「ビル・ロビンソンの弟子vs橋本真也の息子」を大日本プロレスでやってるんですからねぇ。
上野:大地選手も紆余曲折ありましたけど、こうしてチャンピオンになって。
——コメントブースでは「親父はIWGPを極めたけど、俺はBJWストロングを極めたい」と言ってました。
上野:超泣けるじゃないですか、そんなの!
——チャンピオンベルトを腰に巻くのも初めてだって言ってました。遊びで巻いたりもしてないみたいで。自分がチャンピオンになって巻くんだと。
上野:いいっすねぇ。大地選手って、俺たちの世代から見たら「倅」じゃないですか。
(この日、初戴冠を果たした橋本大地)
——どうしたって「橋本真也の息子」として見られますよ。
上野:だから「髪型がチャラい」とかもことさらに言われるし。「全然、破壊王継承できてねえじゃん」とかね。今日の試合も、鈴木選手が支配してたと思うんですよ。やっぱりあのレスリング技術は凄い。その中で、大地選手は最後に勢いで上回ったかなって。勢いで勝っただけとも言えるんですけど、でも考えてみたら、そこも橋本真也選手に似てるのかなっていう。あの人もテクニックがうまいとか、そういうタイプじゃなかったはずなんで。
——やっぱり、ここぞという時の怒涛の攻めが凄かったですもんね。
上野:そういう意味では継承してるんじゃないっすかね。基本、見た目が今どきの若者だからオッサンにいろいろ言われますけど。
——フィニッシュの垂直落下式DDTも説得力ありましたね。
上野:親父の必殺技でベルトを獲るっていう。技を継承するのは悪いことじゃないですからね。むしろいいことでしょう。
——基本、オールドファンからしてもうれしいことではあるんですよね。あとは話題性に実績がどこまでついてくるかっていうところで、この戴冠は大きいでしょうね。そして防衛ロードでどう成長していくか。
上野 これから先が見たいですよね。
——上野さんは最初に「IWAの流れ」としての大日本っておっしゃってましたけど、ここにきて「破壊王継承の流れ」も大日本で見られるという。
上野:信じられないっすよ(笑)。一回目のカミソリ(十字架ボード)デスマッチ、葛西(純)選手と沼澤邪鬼選手の試合とかも生で見てますけど、ホントにヤバかったですからね。ボードに当たった瞬間に大出血で。
——カミソリを設置した形そのまんまに背中から血が出てきて観客全員が戦慄したっていう。
上野:あの時のTシャツ、今も持ってますけど、あの時は「もうやめてくれ! これは絶対ダメ!」って言ってましたからね。一線越えてるよって。で、その時にずっと携帯鳴ってて、それが当時つきあってたメンヘラの彼女からの電話で(笑)。頭おかしくなるかと思いましたよ。「どっちも死ぬのはやめてくれ!」って(笑)。
——今となっては笑えますけど(笑)。そういう「ヤバさ」を感じるところもありつつ、今の大日本のデスマッチにはメジャー感もあるのかなと。
上野:そうそう。俺らで言えば、ちょっとデカい会場でライブした時に「お前ら上に行ったな」って言われるみたいな。横浜のちっちゃいクラブから都内の名の知れたライブハウスって場数踏んでいくっていうのを大日本もやってきたんですよ。
——それで会場の大きさに負けないものを見せられてるわけですよね。
上野:両国でもやってますからね、今の大日本は。あとは今日、俺の隣で見てたマネージャーのヤマチ(山之内)くんにも聞いてくださいよ(笑)。
——デスマッチ、いかがでした?
山之内:いやもう衝撃すぎましたね……。
上野:俺の横でずっと驚いてましたからね。「うわっ!」「あぁ~!」って。
山之内:凄かったです……。
——こういう衝撃って大事ですよね。
上野:俺たちだって、慣れてるとはいえ平気じゃないですからね。偏見ある人も見たほうがいいし、なんなら一回、蛍光灯踏んでみろって。俺はあるんですから。
——え、あるんですか?
上野:葛西(純)さんと一緒の音楽イベントに出させてもらった時に、葛西さん達の試合の試合の後にリングでライブしたらたまたま残ってた蛍光灯の破片を踏んじゃってたんですよ。なんか足の裏ずっと痛いからって次の朝に見たら刺さっててピンセットで抜いたんですが「こんな深く刺さるのかよ!」ってビックリして。デスマッチ見て、レスラーへのリスペクトの気持ちが新たになるってこともあると思いますね。
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