
高齢化社会が進行する中、「好きです」「SEXしたい」など115通のメールを男が女性に送って逮捕されるケースなど、性欲を爆発させてしまった高齢者が暴走するケースが増えている。
60歳以上のストーカー加害者の数は、2009年から1000人近く増加し、2016年には2111人にも上っている(警察庁資料)。さらに65歳以上の強姦検挙人数は30年前と比べるとおよそ9倍、強制わいせつは21倍以上に増加している(「犯罪白書」)。今月2日には和歌山県御坊市の住宅で67歳の女性が遺体、80歳の男性が意識不明の重体で発見された。男性のもう1人の交際相手であった谷本マチ子容疑者(64)は「彼氏(80歳男性)の顔や頭などを拳などで殴った」と供述しているという。
田中さん(50代女性、仮名)も、"シニア・ストーカー"の被害者の一人だ。
「クリスマスにプレゼントが突然届いた。開けたらすごい派手な下着のセットで、スケスケだったりパンツに穴が空いてたり…。ものすごく悪趣味、普通じゃないなって。下着がぎっしり詰め込んであった」。
5年前、ダンス教室に通い始めた田中さんは、そこで知り合った70代の男性講師からのストーカー行為を受けるようになる。毎朝メールが届くようになり、「最初は初めてお会いした翌日だったので『お疲れ様。これからもよろしくね』。次の日も届いて、『今日も元気で頑張りましょう』。そんな感じ。すごく律儀な人だなと思っていた」。男性からのメールは1か月以上途切れることなく、「2人で会おう」と頻繁に誘われるようになった。

怖くなった田中さんがメールを無視するようになると、男性は本性を現すようになる。「うちの隣にあるコンビニに先生の車が止まっていたのを何回も見た。お買い物するわけではなく、ずっと車の中にいて、こっちを見ていた」。さらに男性は田中さんの勤務先にも現れ、ただじっと彼女を見続けたこともあったという。
次第に外に出ることさえも怖くなった田中さん。しかし、行為は終わらなかった。田中さんが行きつけのカフェの写真をFacebookにアップすると、男性が翌日からそのお店に現れるようになったという。また、自宅で「体調崩した」と呟くと、突然男性から「風邪薬持って、今から行くね」というメールが来ることもあったそうだ。
ダンス教室の講師を別の男性に変えてもらったものの、女性講師に呼び出されてレッスンに向かうと、問題の男性がいたこともあった。「"彼女は都合悪くなったから、僕がお相手します"って。上半身裸だった。薄いタイツ、下半身の形がわかるよう薄いタイツだけ履いてお稽古場に立っていた。"練習着に着替えて用意して"と近づいたので怖いと思って、"私、今日ちょっと用事を思い出したので"と言って帰った。

身の危険を感じた田中さんはダンス教室を辞め、メールなどの証拠を元に警察に相談した。ストーカー行為は無くなっていったが、今でも恐怖は残っているという。
こうした高齢者によるストーカー被害について、『老人たちの裏社会』などの著書がある新郷由起氏は「手を繋ぐだけで不良と呼ばれたような抑圧された時代を経験しているので、恋愛経験をたくさん積んでいる高齢者はそんなにいない。だから自分にとってはテレビや映画で観た純粋で熱烈なアプローチでも、ストーカー行為になってしまう」と話す。

また、「家族と一緒に住んでいても、自分の下着だけ雑巾と一緒に洗われるとか、もう粗大ゴミ扱いされているとか、そういう疎外されている高齢男性の方が逆に何かを求めていることもある。スーパーのレジであったりレストランであったり、そういう形で自分より年下の女性が優しく接するのを"この人は僕が好きに違いない"とか"この人こそ僕の運命の恋の相手だ"と一途に思い込んでしまう、錯覚してしまう男性は少なくない」と指摘していた。


