1月21日に開催されたアメリカの総合格闘技団体「ベラトール」ヘビー級トーナメント1回戦、第1試合、チェール・ソネン対クイントン・ランペイジ・ジャクソン。3ラウンド判定となった試合は、下馬評で不利といわれていたチェール・ソネンが判定で勝利した。
「一発当たれば倒れる」と言われるヘビー級のファイトにミドル~ライトの選手であるソネンが、15~20キロ上回るランペイジに挑みテイクダウンで完封。1ラウンドのスピードを活かした打撃数でも勝る番狂わせは、大味になりがちなヘビー級トーナメントを戦術で勝ち抜くという一つのヒントとなる試合だった。
過去のMMAの大会におけるトーナメントといえば、かつてのPRIDEやRIZIN、黎明期のUFCに代表されるように1日で全日程を消化するワンデイトーナメント、もしくは準決勝と決勝を翌日にするものが多かったが、数ヶ月に渡っている点がユニークだ。
実際ソネンとランペイジが1月の大会、2月にミトリオンvsネルソン、4月にヒョードルvsミアという異例のスケジューリングだが、この方法だと各選手は、対戦相手に集中することができ、勝ち進んだ際にも準備や戦術が立てやすい。特にヘビー級で30代~40代のレジェンドまでエントリーしているこの大会で、凡戦やスタミナ切れの一方的な試合を避ける苦肉の策とはいえ、これまでに中長期的にトーナメントを演出できるという点では、大会数の多さに対し売りのカードを組むのに苦心しているベラトールのような団体ではまさに渡りに船の妙案といえるだろう。
1回戦の第2試合となるマット・ミトリオンvsロイ・ネルソンの元UFCファイター同士の対決が実現する。
前回の試合でヒョードルと打ち合いでダブルノックダウンしつつも、先に蘇生パウンドの嵐で1RでKO勝ちし3連勝、UFC時代の不調から一転新天地で再度輝きを見せ始めているミトリオン。
一方、UFCでの驚愕のレフリーへのキック事件から居場所を失った41歳の元UFCヘビー級王者ネルソンにとっては、ジャビー・アヤラとのベラトール1戦目の勝利を経て本格的な再始動となる1戦となる。なお両者のUFCでの対戦は6年前。その時はミトリオンがKO勝利をおさめているが、時間を経過しフレッシュな状態での再戦となりそうだ。
なお、ベラトールはすでにケガ人が出た場合のリザーブファイターを発表しているが、なんとシェイク・コンゴとジャビー・アヤラという、「本戦になぜ呼ばなかった?」と言いたくなようなラインナップ。シェイク・コンゴといえば、UFCでミルコ・クロコップを下し、ベラトール移籍後は5連勝、一方のジャビー・アヤラは、あの「PRIDEの死神落下傘」ことセルゲイ・ハリトーノフを16秒でKOしセンセーショナルを巻き起こした選手。いずれにしても約1ヶ月おきの開催と余裕のあるスケジュールでのトーナメントで大怪我にならない限りはリザーブファイターの登場はなさそうだが、コンゴやアヤラといったトップ級をリザーブに回すあたりにもベラトールの勢いを感じさせる。
UFCはミオシッチvsガヌーの頂上決戦をソネンvsランペイジの同時間にぶつけてきた。現役感という意味では当然ながらUFCに分があるものの、経験値の高いベテラン選手同士の再チャレンジの場としてもベラトールは最適なステージを用意しているように思える。