日本中の注目を集めた将棋界の第一人者・羽生善治竜王(47)と、中学生棋士・藤井聡太六段(15)の公式戦初対局は、藤井六段の快勝という結果になった。対局時に五段だった藤井六段は、同日に朝日杯将棋オープン戦で優勝し、六段昇段も決めた。対局後、藤井六段は羽生竜王について「感無量です。将棋を始めたころから、羽生先生はとても大きな存在で憧れでもありました」と語った。将棋界において、そんな憧れを抱く若手棋士たちが、次々と羽生竜王への“恩返し”を果たしている。

 将棋の世界において、弟子が師匠と対局し勝利することを「恩返し」と呼ぶ慣習がある。実際、藤井六段は師匠の杉本昌隆七段(49)と3月8日に公式戦で対局することが決まっており、ここで勝利すればまさに恩返しとなる。現役棋士でも弟子を取るのが将棋の世界だが、羽生竜王は弟子を取っていない。とすれば、若手棋士が勝ったとしても恩返しにはならないが、実際の師弟以上に羽生竜王の背中を見て育った棋士たちは無数にいる。

 昨年、棋聖戦五番勝負で羽生竜王に挑戦した斎藤慎太郎七段(24)は、「初めて読んだ将棋の本は羽生先生の本でした」と語った。直接的な指導こそ受けたことはないかもしれないが、今から22年ほど前の1996年に「七冠独占」を達成した羽生竜王の将棋に、全く触れずに棋士になった者は皆無と言ってもいいだろう。むしろ真っ先に憧れの存在である「羽生将棋」を手本とし、棋譜を並べ、本を読み、真似て指しながら成長してきた方が自然だ。

 少年時代から羽生竜王のライバルとして戦い続けてきた森内俊之九段(47)は、同世代としてこんなコメントをした。

 森内九段 羽生さんも時期によって若い棋士との戦い方が違います。少し後輩の10歳差ぐらいまでは、年も近いので羽生さんも負けられない気持ちが強かったのか、闘志を感じるような対局が多くて、その中で高い勝率を維持していた。今の若手棋士との対決を見ると年齢も20、30と違って、親子ぐらい差がある対局も出てきている。羽生さんといえども、強い気持ちを持って戦うというのも、ちょっとずつ難しくなっているのではないでしょうか。実際に、羽生さんに立ち向かう若手たちも、みんな羽生さんの将棋を勉強して強くなってきたので、今までどおりにはいかないのかもしれませんね。

 永世七冠を達成してなお「将棋そのものを本質的にはわかっていない」と語るほど探究心の塊のような羽生竜王だけに、将棋に対する熱意は変わっていない。ただ、自分が指してきた将棋を余すところなく吸収し、その上に将棋ソフトなどの研究を上乗せしてきた若手棋士との対局は、それこそ「羽生+α」ともいえるような、自分自身の強化版と相対するようなものだ。

 17日の対局後、羽生竜王は「若い世代の人たちが台頭してきているのが特徴です。同じやり方がこれから先も通用するとは思っていない。新しい時代の将棋の感覚も取り入れないといけないなと痛感しました」と語った。若手棋士から“恩返し”された後もなお、ともに第一線を走り続けようとする絶対王者。間接的に教えてきた大量の弟子たちの“師弟対決”は、これからも数々の名勝負を生み出しそうだ。【小松正明】

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