大相撲・春場所四日目、十両の土俵でファン注目の一番が組まれた。169センチ115キロの照強と、169センチ95キロで今場所が新十両の炎鵬との“小兵業師対決”は時間こそ短かったものの、両者の技と技の攻防がぎっしり詰まった見ごたえのある相撲となり、館内は大いに沸いた。炎鵬に懐に入られて土俵際に詰まった照強だったが、相手の首を左で極めながらの右小手投げで逆転勝ち。照強が先輩関取の意地を見せ、先場所の初対戦からも連勝となった。
力士の大型化が叫ばれて久しいが、その中にあって個性を存分に発揮して土俵に彩を与えているのが、いつの時代も小兵の業師たちだ。小錦、曙、武蔵丸といったハワイ出身の巨漢力士全盛期に奇抜なアイデアを駆使しながら対抗したのが“技のデパート”と言われた元小結舞の海。猫だましや内無双、牛若丸のように天高く舞ってひらりと相手をかわす“八艘飛び”はこの人の代名詞でもある。
炎鵬の兄弟子で幕内最軽量116キロの石浦は、舞の海とはタイプが違う小兵力士。相撲の稽古だけでなく、総合格闘技のジムにも通って身につけたスピーディーな動きと思い切りの良さが身上だ。その石浦が憧れているのが、昭和40年代後半から50年代にかけて幕内を席巻した元関脇鷲羽山。175センチ112キロの軽量ながら、まわしにはこだわらず突き押しと絶妙ないなしで横綱北の湖を苦しめ“ちびっこギャング”の異名も取った。
今はけがで低迷している宇良だが、独特なアクロバティックな相撲はこれまでにない変則タイプの力士で、復活が待たれるところ。昨今の大相撲ブームの一翼を担っているのが、技とスピードとアイデアで体格のハンディをカバーし、大型力士と対峙しているこうした超個性派たちとも言えそうだ。
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