大相撲ヘビー級の時代と言われる昨今、果たして今場所の幕内力士42人の平均体重は164.9キロ! 背丈も平均184.5センチ! 本当に大きい! しかし、そのヘビー級の力士たちに立ち向かう小柄な(といっても一般的には大き目な方々です)”小兵力士“は、相撲界ではどんな時代でも人気がある。「小よく大を制す」が好まれるわけだ。
今場所も十両の小兵トリオとでも言いたい、炎鵬(167センチ92キロ)、照強(168センチ92キロ)、翔猿(175センチ121キロ)に注目が集まっている。中でも人気は炎鵬。十両土俵入りで行司さんの後ろに並ぶと隠れて見えなくなっちゃうリトルっぷりが愛しい炎鵬は、たとえ負けても相手に食らいついていく相撲で見る人の胸を熱くする。
その炎鵬との小兵対決(四日目/14日)に勝った照強は、阪神大震災当日に淡路島に生まれたことで知られる。稽古熱心でウエイト・トレーニングで筋肉武装し、速い、上手い、ガッツがいい。
翔猿(176センチ122.5キロ)は、お兄さんが幕内の英乃海(186センチ165キロ)。そちらはまさにヘビー級なのに、こちらは小兵。「申年生まれで猿のような動き」から四股名を付けられたそうだけど、猿より機敏な動きで見ていて本当にワクワクする。
幕内に目を向ければ、石浦がいる。174センチ116キロと幕内平均体重より50キロも軽いけど、筋肉でそれを補い、見ただけで強そう、格好いい、惚れ惚れする! 炎鵬も翔猿も石浦への憧れを口にするように、今、小兵を代表する関取といえば石浦になるのでは?
しかし、忘れていけないのは、現在休場中、多彩な技で沸かせる宇良(172センチ135キロ)。あのキョトンとした表情も可愛らしくてスー女だけでなく通な男性ファンをも頷かせる、小兵界のスターだ。
今場所の幕下以下に目を向ければ、里山、福山、鳴滝、爆羅騎と、小兵で、かつ強さや相撲のおもしろさで人気上昇中の力士はけっこういる。特に爆羅騎は身長164センチと群を抜く小ささ。新弟子検査で思い切り背伸びをして合格にさせてもらったというエピソードには相撲界の大らかさが見え隠れして涙をぬぐいたくなる。
そして、小兵といえば里山、里山といえば小兵(175センチ125キロ)! 長らく小兵力士の代表として土俵を沸かしてきたベテランで、ここしばらくは幕下で奮闘しているが、相撲ファンは里山というと「2014年初場所での千秋楽で、幕内勝ち越しと技能賞受賞が髷を掴んだ反則負け」にされて消えたことが悔しいと、涙を浮かべんばかりに永遠に言い続ける。それだけ彼は愛される小兵で、小兵な故に愛されてきたとも言える。
ちなみに過去の力士に目を向けてみれば、小兵といってまず名前が浮かぶ人に「技のデパート」と呼ばれた舞の海(171センチ96.5キロ/現役当時)、石浦が尊敬する鷲羽山(175センチ112キロ/現役当時)らがいるが、さらに歴史を振り返ると巴潟(ともえがた)がいる。
今、両国駅を降りるとその看板が目につくちゃんこ屋さん「巴潟」。その名は創業者で、昭和初期の名力士・巴潟のしこ名から付けられた。
巴潟は165センチ90キロと炎鵬より小柄な昭和初期の人気小兵力士。今、その写真を見ると日馬富士に似たかわいい笑顔で筋肉質。朝2時から(!)稽古を重ね、「人間弾丸」というニックネーム、小さな身体を丸めて飛び込んで一気に押す相撲で、幕内の花形力士だった。
なるほど小兵力士とは時代は変われど、小さな体に熱いハート、鍛え上げられた筋肉を生かした俊敏な動きと、厳しい稽古で磨き上げた技巧で土俵を沸かし、さらに可愛くてみんなに愛されキャラ――なのだと納得した!【和田静香】
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