現役復帰とラストマッチを行なうことを表明した、元ボクシング世界3階級制覇の亀田興毅にインタビューを行なった。いったん引退しているだけに、試合への手応えはまだまだ未知数。密着ドキュメント「ラスト亀田興毅-最後の現役復帰-」もAbemaTVで放送されるが、自身にも見えていない部分は多いようだ。手探りの中で進んでいく、最後の大勝負への道とは!?
―今回、1試合限りの現役復帰ということで、体力や試合勘についてはどんな感覚ですか?
亀田 きついですね、かなりきついですよ。今日、この取材してる3月10日の時点では、まだ全然仕上がってない。10%くらいですよ。
―練習はどれくらいの時期から?
亀田 1月の段階では、まだふんわりした感じで。言ったらリハビリですよ。ちょっと力が入ってきたのが2月。3月になって、いよいよ本格的にやらなあかんと。ただ現役時代とは生活環境が全然変わってるんですよ。前はボクシングが生活のメイン。でも今は仕事もしなきゃいけない。このバランスが難しいですよね。
―芸能活動などを全部断ってボクシングに集中するというわけにもいかないと。
亀田 無理ですよね。そういうしんどさもあるんですよ。そんな時間がない中で、どれだけ効率よくトレーニングできるか。自分の能力を伸ばせるか。そういう部分での追求ですね、今回は。短期間で効果を最大化するのがテーマ。それを考えながらやってます。難しいですけどね。
―試合は5月、「1000万」から1年後が目標とのことですね。
亀田 そこを目指して動いてますね。それが一番きれいじゃないですか。
―時間が許せば、もっと練習期間を取りたいですか。
亀田 それはそうですよ。だからまだ分からない。仕上がり具合によって、自分が納得いかなかったらリングに上がらない可能性もありますよ。
―番組が成り立たなくなりますね……。
亀田 それは最初からですよ。もしかしたらケガするかもしれないんで。何が起こるかわからへん。それは「1000万」もそうやったし。
―階級はどうされるんですか?
亀田 バンタムくらいですね。バンタム級か、それに近い体重で。
―引退前と同じ階級ですよね。それもハードルが高そうです。
亀田 正直言えば、階級にはこだわらなくていいんですよ、1回だけの復帰、最後の試合なんやから。スーパーバンタムとかフェザーの契約体重でいい。これから世界タイトル目指すんじゃないから。
―ですよね。
亀田 でもバンタムでやることによって、真剣さを見せられるじゃないですか。「亀田、本気やな」って。自分自身、そこまでせな本気になれないし。
―減量はそれくらいになりそうですか。
亀田 8.5kgとかかな。今までで一番しんどいかもわからん。
―1試合のためにそこまでやらなきゃいけないと。
亀田 それだけ意味があるってことですよ。自分がリングに上がって話題になって、試合を見てもらえれば、若い選手、アンダーカードにも目が行くじゃないですか。そこが注目されるようにしていきたいんですよ。
―興行の中で、自分の試合以外も流してほしいと。
亀田 そこで若い選手の中から強い、キャラのある子が注目されて人気になればっていう。そうやってつなげていかないと。自分が満足して終わりじゃなくて、ボクシング界のためになることをしたいから。他の選手にもストーリー、ドラマがあるわけやから。それも見てほしいんですよ。
―自分のケジメであり、ボクシング界への貢献であると。
亀田 あとは子供が3人いるんですけど、上2人が5歳、4歳。現役時代は上の2人も物心ついてなかった。去年「1000万」見た時に、凄い興奮してたんですよ。次の日からもうヒーローですよ、俺(笑)。
―お父さんが闘ってるわけですからねぇ。
亀田 子供たちからしたら戦隊もののヒーローショーを見たような感覚だったかもしれない。パンチで敵を倒してね。じゃあ今度は、自分がずっとやってきたもの、人生かけてきたボクシングの公式戦、真剣勝負を見せてあげたいんですよ。「これをやってきたんやで」って。
―いろんなテーマ、思いがあってのラストマッチなんですね。
亀田 そこまでの思いがなかったら、リングに上がれないですよ。それだけしんどいことなんで。「これが亀田興毅や」っていうのも見せたいですね。結局、俺は口でどういう言うんじゃなく、闘う姿でしか伝えられないものがあると思ってるんで。
―「リングは麻薬」とも言われますが、1回復帰してみて「もっとやりたい」となる可能性もあるんじゃないですか?
亀田 いや、それはないかな、きつすぎるから(笑)。でも分からないですよ、正直。新しい練習をやってみて「まだこんなに強くなれんのや。もう1回、世界行くか」ってなるかもしれない。それは自分でも分からないですよ。でも今の時点では「これで最後」と。そうじゃなかったらやれないです、こんなきついこと。