新生K-1史上最大のイベント、3.21さいたまスーパーアリーナ大会まであと数日と迫ってきた。目玉カードの一つは、スーパー・バンタム級チャンピオンの武居由樹が久保賢司を迎え撃つタイトルマッチ。試合に向け、格闘技ファンとして知られるアルコ&ピース平子祐希さんが武居が所属する「POWER OF DREAM」を訪問。対談という形で若き王者の魅力に迫ってもらった。

■うちの嫁が「ザ・ノンフィクション」を見て凄く感銘を受けて。まだ4歳くらいの息子にも無理やり見せてました。(平子)

――今回は武居選手と平子さんの対談をお願いしたんですが、平子さんは長く格闘技を見られてますよね。

平子 K-1の初期からだと思います。旧K-1を深夜で見てましたよ。第1回GPの後に、アーネスト・ホーストがK-2GPに出たり。当時、中学生くらいかな。「ギルガメッシュないと」とか「トゥナイト2」とか、Hな深夜番組を見ようとしてザッピングしてたら出会ったっていう。

――武居選手はどうでしたか?

武居 ちっちゃい頃にテレビでちょこっと見てた感じです。そんなに好きで見てたとかではなくて。

――かつてのK-1はヘビー級の世界でしたけど、新生K-1は軽量級が充実してますよね。その辺はどんな印象がありますか?

平子 最初は違和感というか「これは見れないかも」と思ったんですよ。やっぱりヘビー級のイメージが強いし、今は魔裟斗選手がいた70kgよりも軽い階級が主体じゃないですか。だからイメージとしては「軽い人たちの判定の試合ばっかり」っていう。でも会場で見てみたら「俺がバカだった!」って思いましたね(笑)。

KOがどんどん出るし、スピードがあるからモッサリしてないし、これは凄いなと。みんなイケイケですもんね。

武居 選手としても、判定とKOでは勝った喜びが全然違いますね。見てる人にもKOのほうが分かりやすいですし、面白いと思うので。そこはこだわってますね。

平子 新生K-1は若くて強い選手が多いし、なんなら顔で選んでるんじゃないかってくらいカッコいいですよね、みなさん。でも単にイケメンとかじゃなく、一つの目標に懸命に向かってる姿っていうのがカッコよく見えるんでしょうね。

――ビクトー・サラビア戦はバックキックで倒しましたが、あれは作戦通りだったんですか?

武居 違う技を出そうとしてたんですけど、相手がガードを上げたので瞬間的に「あ、こっちだ」って。

平子 それができるっていうのが凄いですよ。言葉にするのは簡単だけど(笑)。

一一瞬の判断ですからね。

武居 たまたまなんですけど(笑)。

一一武居選手はジムに預けられて、自分で格闘技をやって好きになったという。

武居 そうです。格闘技が好きになったのは中学生くらいですかね。波もあったんですけど。

平子 会長に竹刀でポンポン頭叩かれたりしながらねぇ。フジテレビのドキュメントでやってましたけど。

武居 はい(笑)。あれが中学生の頃です。

平子 楽しそうな雰囲気は伝わってきてましたよ。

武居 うちのジムは家族とか兄弟みたいな感じですね。みんなで頑張ろうっていう。

平子 共同生活ですよね。一時期は公園で練習したりっていう時期もあって。映画みたいですよ。

――武居選手とジムの様子はテレビのドキュメンタリーで放送されてましたから、武居選手が子供の頃から知ってるという人も多いですよね。だから「あの子がK-1のチャンピオンに」っていう感慨もありますよね。

平子 うちの嫁があの番組(「ザ・ノンフィクション」)を見て凄く感銘を受けてまして。まだ4歳くらいの息子にも無理やり見せてましたから。そのあと新生K-1を会場で見て、武居選手がチャンピオンになったって言ったら本当に喜んでましたね。今はドラマ性にスター性もついてきた感じで。

武居 ありがとうございます!

平子 K-1の会場には息子も連れて行って、そしたら「将来、K-1のお兄さんになりたい」って言い出して。もう2年くらい、空手を習わせてるんですよ、ベースとして。

――K-1の前段階ですか。

平子 自分から言ってきたので。親から強制はできないですからねぇ。選手になる大変さも、普通の人よりは分かってるつもりなんで。近くで見させてもらってる分。

――格闘技が好きな分、慎重になるというか。。

平子 そうなんですよ。お笑い芸人にさせたくないのと一緒で(笑)。でも自分から言ってきたのは嬉しかったですね。「ゆくゆくプロになりたいって言ってきたらどうしよう」なんて考えたりもしますよ。

――武居選手はどうですか、逆に憧れられる、目標にされる側ですけど。

武居 格闘技をやりたいって思ってもらえるのは凄くうれしいです。やりたいと思った人には「とりあえずやってみて」って伝えたいですね。向いてるかどうかっていうのも、やってみないと分からないことなので。

平子 子供からすると、空手で帯の色が上がるのも楽しいらしいですね。逆に大会で優勝できても、帯が上がると勝てなくて挫折を味わったり。そういう経験もまたいいのかなと。

僕も習ったことがあるんですけど、全然向いてなかった(笑)。痛すぎて。よく「アドレナリンが出るから痛くない」って聞くんですけど、僕の場合は痛かったですねぇ。それでこれは無理だと。自分は見る側だなって思いましたね。

――平子さん体力かなりありそうですが……。

平子 ラグビーやってて体も大きくて自信あったんですけどね。やってみたら完全に赤ん坊扱いでしたよ。ハイキックを当てられそうになって、でも顔の目の前でピタッと足を止められたり。

――マンガみたいな光景が。

平子 「グラップラー刃牙」かと思いましたもん。あれ案外フィクションじゃないなって。そういう経験があるんで。選手の人たちに対するリスペクトの気持ちが強いんですよ。軽量級の選手だって、そりゃメチャクチャ強いですよ。体重差とか階級差とかよく言われますけど、それをひっくり返しちゃうくらい強い人もいるなって。ちょっと齧ったレベルとプロのトップなら余計ですよ。雲の上の人たちですから、K-1のチャンピオンなんて。

武居 僕は大きい人は怖いです(笑)。

平子 武居選手、見た目は威圧感ないですけど、神経の伝達能力が違うんじゃないかなって。


■武居選手は「親」として見ても胸に来るものがあります。「自分の子供もこういうふうに育ってくれたら」(平子)

――武居選手は自分ではどこが強みだと思いますか?

武居 これマジメな話、全然なんにもないです(笑)。謙虚キャラとか抜きにして、ないです。

平子 謙虚キャラ(笑)。でも、なくはないでしょう。

武居 学校の体育も苦手だったんですよ。

平子 ということは、格闘技に特化された能力なんですかね。それも怖さですよ。

――キャラ的にはナメられがちだけど、実は強いって一番怖いですね。

平子 僕が街ですれ違っても、道譲らないですもんね(笑)。でも実は強いわけじゃないですか。

――武居選手は試合ぶりだけでなく、マイクも印象的ですよね「足立区から来ました」という。

平子 謙虚な好青年ですよねぇ。「足立区から来ました、パワーオブドリームの」ってジム名から入るじゃないですか。僕らは「太田プロから来ました」って言わないですよ(笑)。これは実際の人柄のよさもありますけど、プロとしての差別化としてもメチャクチャいいですよ。コンテンツとして「いい隙間見つけたなぁ」って(笑)。それはインパクトのある勝ち方があってこそなんでしょうけどね。

――メチャクチャ強いのに、試合が終わったら謙虚っていう。

平子 応援したいっていう気持ちになりますよ。これは格闘家に限らずですけど、謙虚でいながら結果を出すっていうのは凄く難しいと思うんですよ。今は強気で押し出しが強いタイプが多いですからね。

――どんどん前に出るっていう。

平子 そういう人間が多い中で、武居選手は「親」として見ても胸に来るものがありますね。「自分の子供もこういうふうに育ってくれたら」って。

武居 ほとんど素でやってるだけです(笑)。ただ会長の教えもありますね。礼儀正しくっていう。

(後編に続く)

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