3月21日さいたまスーパーアリーナで開催された「K-1 WORLD GP 2018 JAPAN ~K'FESTA.1~」。大会の目玉となった、第4代スーパー・フェザー級王座決定トーナメントを制し新たにスーパー・フェザー級を戴冠した武尊には、新階級でのタイトル保持という茨の道が待ち受けている。
トーナメントから興奮覚めやらない状況ではあるが、一夜明け会見では早くも、トーナメントに参戦した皇治が名乗りをあげ王者との一触即発の場面もあった。
トーナメントのエントリー時には、ほぼノーマーク状態ながら、今回の大会が終わってみると強烈な存在感を放ったのが皇治だろう。リング外では歯に衣着せぬトラッシュトーカーぶりと「あくまでターゲットは武尊」というビッグマウスぶりで、試合前の緊迫感を煽りつつも、リングにあがると卜部弘嵩との戦いで延長に持ち込み、最後は気持ちの強さで振り切った。続く二回戦の小宮山工介戦では、小宮山の距離を潰す戦略に敗れは、したもののフルラウンドの判定、スリップにも取れるダウン判定に泣かされた一面もある。
ツイッターでは「世界3位もビリも変わらん」とサバサバと総括しながらも、流血しながらも常に真っ向勝負という気骨のある戦いっぷりに魅せられたファンも少なくなかった筈だ。
皇治というファイターの心の強さを実感したのはやはり、卜部弘嵩戦の延長戦だろう。両者ともに3ラウンドフルで戦いキツイ場面ではあがったが、一歩一歩前に出る気迫で実力者、卜部を僅かながら上回った。解説の魔裟斗をもって「一皮向けた」と言わしめたのは、拮抗した場面で勝ち切るメンタルの部分もあると思う。
彼を無礼で傍若無人というのは、誇張された報道によるものも大きいと思う。試合後のツイートでも「誰が何言おうが60キロを築いてきたのはヒロヤン中々強かった」と対戦相手の卜部弘嵩を称え、「コミリン(小宮山工介)も流石上手いな俺は好かんスタイルやからコミリンには興味ないわ笑♪ありがとう」と、実を取るやや苦手なタイプともとれる小宮山戦についても、その上手さについては、彼らしい言葉で綴っている。さらに「兄ちゃんやられて悔しいなら顎わって黙らしてみぃ」とやや挑発気味だが、ライト級王者になった卜部功也にも宣戦布告しているあたりも抜け目がない。
前述したトラッシュトーカーという表現もあるが、ある意味皇治は口に出すことによって、大阪から中央のK-1運営を動かし、様々なことを実現しようとしている。トーナメントを制したばかりの武尊から「やりたいならいつでもやってやる」の一言を引き出したのは、ただの煽りへの売り言葉に買い言葉だけではない、今回の皇治の戦いぶりから出た本音だろう。
エンターテイメント的な側面としても不可欠になって来たトラッシュトークも、海外のMMAや格闘技の世界では集客や人気のバロメーターとして重要な要素だ。何よりもファイターたちの推進力となる。ファンとして単純に、打ち合いを好む武尊と皇治のガチンコは見てみたい、次のタイトル戦の候補として挙げる人も、今回のトーナメント後では、圧倒的に増えたはずだ。
今回も、皇治の大応援団がさいたまスーパーアリーナに駆けつけた。12月にはエディオンアリーナ大阪での初の大阪大会も決定し、地元への凱旋と状況も整った。大会が終わってなおノーサイドとは行かない辛辣な言葉が飛び出すのが「やりすぎ皇治」たる所以でもあるが、彼をこよなく愛する人たちが集まる大阪でのK-1で、何かやってのけそうな空気をこの男は持っている。絶対王者誕生にみえる2018年のスーパー・フェザー級戦線だが、混迷の鍵を握るのは皇治かもしれない。