3月21日に開催された「K-1 WORLD GP 2018 JAPAN ~K'FESTA.1~」。「新生K-1と呼ばれるのは今日まで」と試合後に武尊が宣言したように2014年から新たにスタートした大会の集大成といえる内容だった。その中でも注目すべきは新たなスターたちだ。
その中でも平本蓮は、2014年K-1甲子園制覇、2015年K-1本格参戦とK-1期待のホープとして注目されてきた。現体制のK-1がイチから育てたとおいう意味では「申し子」といえる存在だろう。そんな彼のキックボクサーとしての最大の目標として、絶対王者のゲーオ・ウィラサクレックの存在があった。ゲーオが自信を持つパンチの打ち合いに、平本がスピードで上回った「ゲーオ超え」の瞬間はノンタイトル戦とはいえ、新たな歴史を刻み続けるK-1の歴史的な世代交代の瞬間ともいえるだろう。
試合開始直後こそ、迫力あるゲーオの攻撃が見られたが、飲み込まれることなく、冷静に平本の対処していた。開始30秒あたりから、上で打ちながらも強烈なインローを放ち、強烈なパンチ、蹴りに対しても打ち負けせずに返していく。
カウンターの攻防でもゲーオの攻撃に対して、ひとつふたつ手数を多く返し、距離をおいてはイン・ロー。長いリーチを活かしたミドルキックも効果的に見せ1ラウンド後半は、前に出る平本にゲーオが後退する場面もみられた。残り20秒でのパンチの打ち合いとなった攻防でも、スピードで勝っていた。
2ラウンドに入ると、積極性を取戻したゲーオだが、平本はここでは打ち合いには応じずに距離と保ちながら、ロー・キックを軸に組み立てる展開。
やや平本が消極的にも見られたラウンドだが残り1分で、最初のラウンド同様打ち合いに持ち込もうとしたゲーオに、打ち勝った平本は最初のダウンを奪うと、そのままパンチの連打で、ゲーオ・ウィラサクレックをKO勝利した。
翌日の会見でも、平本は「2ラウンドになるとゲーオがヒザ蹴りで倒しに来ると思っていたので、僕はあえて行かずに一気にまとめられる時にまとめようと思った」と振り返ったが、今まで日本人キラーとして打ち合いで勝ってきたゲーオに同じ土俵で勝利した意味は大きい。
ちょうど1年前、2017年3月21日に平本は「一年後ゲーオとメインイベントで戦いたいまだ早いしまだ勝てないけど、一年あれば俺なら最強に強くなれる。俺ならやれるって思える!」とツイッターで宣言していた。ちょうど1ヶ月前に初代ライト級王座決定トーナメントで、ゴンナパー・ウィラサクレックをKOし、トーナメントのファイナリストに進出、惜しくもウェイ・ルイに敗れたものの、この時から彼の目標は、ついに見えかけてきたゲーオの背中だったのだ。
そんな平本だが、今後の目標を聞かれると「スーパー・ライト級は強い選手が多いし、タイトルマッチじゃなくても簡単な試合はないと思います。簡単にチャンピオンを目指すとは言わない。今後のことはゆっくり決めていきたいです」と控えめなコメントをしていたがツイッターでは「1年後の目標はK-1世界チャンピオン!必ずなる!」と宣言している。
平本は今回の大会で紛れもなく次期王者候補に躍り出た。「組まれればやりたい」とすでに臨戦態勢の野杁正明へのタイトル挑戦、もしくは、ウェイ・ルイからライト級王座を奪還した卜部功也という選択肢も考えられる。
最近ではTV番組などへの露出も増え、恋人の中野恵那との交際もオープンに、家族や友人を大切にする好青年ぶりなど、爽やかで真っ直ぐな新しいタイプのファイター像を築きつつある彼が次はどのようなドラマを見せて行ってくれるのか注目したい。