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 "自分は関係ない"という考え方を世の中からなくすため、各国で子どもたちの映像を撮影しつづける男性がいる。近藤祐希さんだ。1986年に大阪で生まれ、10歳からはアメリカ・オレゴン州で過ごした。18歳で帰国後、慶応義塾大学で環境問題を学び、ソニー・ミュージックを経て2015年に「WORLD FESTIVAL」を設立した。

 「振り返ってみると、アメリカに引っ越した時に、マイノリティーとしていじめられることもあった。なんで差別するんだろう、存在を否定するんだろうという記憶が、今の活動につながっているとも思う」。

■モンゴル:小学校入学時点で生じる「教育格差」に苦しむ子どもたち

 モンゴルでは遊牧民の6歳の男の子を追った。父親と一緒に馬で羊を追っていた彼に、旅立ちの日が迫る。小学校入学のために親元を離れ、一人で寮生活を送ることが決まっている。文字の読み書きなど、入学前の教育支援をするのは国際NGO団体「セーブ・ザ・チルドレン」のスタッフだ。

 幼児教育に力を入れ、都会の幼稚園では読み書きや算数を教えているモンゴル。就学前教育に関しては、日本以上に盛んだ。一方で、ゲルなどで暮らす遊牧民の子供達は幼稚園に通うことは容易ではない。小学校入学時点で読み書きができない子もおり、いじめや差別の原因にもなっているという。

■フィリピン:東京ドーム22個分のゴミの山で暮らす子ども

 4年前からは10回以上にわたってフィリピンを訪れてきた。「呆然とするような、環境だけでなく経済格差もとんでもないし、スラム街だらけでどう解決したらいいのか」と強烈な印象を受けた。

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 スモーキー・バレーとも呼ばれるパヤタス・ダンプサイト廃棄物処分場の周辺には約3000~5000人の人々が暮らし、日々、ゴミの山で売り物を探している。稼ぎは1日約300円だ。将来なりたい職業を聞くと「ゴミを買い取る元締めになる」という答えも返ってくる。

 「違法なので、政府はこういう場所を排除しようとしている。でも仕事がない。ゴミを拾って中国の人に売るといったことをしないと、ご飯が食べられない」。

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 近藤さんは3年前、ここで子どもたち向けの職業体験イベントを現地の教育支援NPO PALETTEと共催した。ネイルアートや美容師、パソコン教室や英会話教室などを初めて体験し、子どもたちの視野は広がった。参加者からは「自分たちには夢を実現する力があると自信が持てるようになった」「今後も私たちのように困っている人々へのご支援をお願いします」と、拙い英語や日本語で感謝の言葉が伝えられた。

 「フィリピンの人たちは音楽が大好きで、どんなスラムの人たちでもカラオケを持っていて、いつも歌っていて、いつも笑顔だ。彼らはどうポジティブに変えようかを考える天才だなといつも思う」。

 セブ島では、大好きな音楽を通して世界と繋がってもらうため、”一緒に楽曲を作る”レーベルプロジェクトを行った。近藤さんの会社のスタッフでプロミュージシャンの前田さんも加わり、メロディと歌詞は全て子どもたちが作った。楽曲は有料配信され、売上は彼らのもとに様々な形で還元される。

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「フィリピンはドロップアウト層といって、学校に行かない子、行けない子、行ったけど辞めてしまう子、辞めざるを得なかった子がいる。お父さんが働かないというケースも多い。長男長女は働かなくてはならないケースもあると聞いている」。

■ヨルダン:「故郷に帰りたい」と願う子どもたち

 内戦で35万人以上もの犠牲者を出し、今も尊い命が奪われ続けているシリア。周辺国に逃れた難民は約560万人にも上り、ヨルダンは約65万人のシリア難民を抱える。炎天下で、電気や水に困る厳しい生活を余儀なくされているのだ。

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 近藤さんはヨルダン・アンマン近郊にある難民キャンプで、シリア・パレスチナ・イラクなど様々な難民の子供たちに、世界や異文化と身近になってもらうお祭りを現地NGOや国際支援組織などの協力のもと開催した。自分が今いる場所がすべてではなく、世界にはまだ知らないことがあり、必ず将来自分の居場所が見つかるということを彼らに知ってもらいたかった。

 「戦争が多い中東には難民がたくさんいる。特に難民をたくさん受け入れているヨルダンの難民キャンプ内では、人種・宗教などの違いで対立もある。そんな中で幼少期を過ごしてしまうと、あいつは○○人だから敵だとなってしまう。だからテント内では政治の話はご法度。それをしてしまうとバトルになってしまう」。

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 生まれて初めて習字に挑戦、折り紙を折ったり、琴を体験したりしてもらった。複数の国の難民の子どもたちが大きな1枚の紙にみんなで絵を描いて楽しんだ。特に人気だったのが、"願いの木"だ。「イラクに平和と安全が訪れますように」「オーストラリアという国に行ってみたい」「故郷に帰りたい」、それぞれの切実な願いを短冊に込めた。

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 「見方によってはヨルダン人と日本人はすごく似ている。特にバスでは女性に席を譲ったり、子どもはみんなの宝だからみんなで育てようみたいな文化もあり、むしろ日本より素晴らしいのではないか」。

■「世界が身近になるようなことをやっていきたい」

 一方、近藤さんが手がけた映像は、悲惨な部分だけではなく、希望のある明るい部分も描く。「社会問題について知ってもらうことももちろん大事だが、そこにしかない幸せの価値がある。紛争地域でもスラムでも子どもたちは笑顔で迎えてくれるし、遊んでいれば楽しい。一人ひとりに才能や可能性がある。そういうことをちゃんと伝えていきたい」。

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 そんな近藤さんが今、日本について考えているのは、「何となく学校に行って、何となく大学受験して、社会人になってお給料をもらう。自分で考えるというより、世間一般的なものに対して受け身になっている人も多い」ということだ。「日本は島国というのもあり、特に地方の子たちは海外に触れることがなかなかない。だから世界が身近になるようなことや、選択肢が少し増えるという経験をたくさんしてもらえるようなことをやりたい」と今後の抱負を語った。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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