(堀口は那須川戦を実現させることで新たなニーズの創出にもつながると考えているようだ)
5月6日に開催された格闘技イベント・RIZINのマリンメッセ福岡大会で、“神童”那須川天心が今回も観客の期待に応えるKO劇を見せた。
キャリア全勝で迎えた30戦目の今回、那須川はキックルールでMMAファイターの中村優作と対戦。いわば他流試合の様相だ。キックが“本職”なのは那須川だが、中村も日本拳法仕込みの打撃を得意としており、キックボクサーとは違う独自の間合いは要注意とも言えた。
実際、試合では中村が右のパンチを当てる場面も。また那須川は中村の組み付きによってペースを乱された面もあったようだ。だが、実は那須川はこの組み付きも想定済み。MMAファイターが相手ということで、練習でも相手にタックルをしてもらうなど対策を練っていたそうだ。
その場の「ひらめき」で出たという胴回し回転蹴りでダウンを奪うと、2ラウンドにはパンチで立て続けに3度ダウンさせてKO勝利。相手に組み付かれ、転倒する場面もあった乱戦状態の中、きっちり自分の攻撃を当てたのだからやはりそのセンスは非凡というしかない。中村も、那須川の「天性の当て勘」を称えた。
(今回も見事なKO勝利を飾った那須川)
試合後には「RIZINでもキックのベルトがほしいです」と、世界トーナメント開催をアピールした那須川。これに返答したのが、メインイベントに登場した堀口恭司だった。
元UFCのトップ選手で、昨年からRIZINに参戦。圧倒的な強さでバンタム級GPを制した堀口は、今年初戦となるこの福岡大会で、同じ元UFCファイターのイアン・マッコールと対戦した。実力者同士のシビアなマッチメイクだったが、堀口は開始9秒でノックアウトしてしまう。フィニッシュはマッコールの左ジャブをかわしざま、カウンターで決めた左フック。短時間だが、相手の動きをしっかり見極めての勝利で、試合を見ていた那須川も「あのカウンターが打てる人は他にいない」と絶賛する。
試合を終えた堀口は「那須川くん、やろうよ」と対戦アピール。それもキックルールでの逆挑戦だ。「俺も(那須川が提唱した)世界トーナメント、出るから」。
堀口は那須川戦について「盛り上げるためにやらないと。僕自身、強い相手とやりたいですし」とコメント。那須川も「めちゃくちゃモチベーション上がりますよ。日本中巻き込みたいですね」。
大会後、RIZINの榊原信行実行委員長は9月大会、大晦日大会での「RIZINキックワールドGP」開催を明言した。詳細は未定だが、もちろん堀口、那須川ありきのGPとなる。
今年最初の大会で、大きな目玉カードが浮上したRIZIN。「堀口にはMMAをやってほしい」、「RIZINの軸はMMAであるべき」という声もあるだろうが、しかし那須川vs堀口にはとてつもないロマンがある。RIZINだからこその、破天荒なドリームカードだ。
文・橋本宗洋