財務省は先週9日、福田淳一・前事務次官のセクハラ問題を受け「セクハラ防止研修会」なるものを開いた。講師として招かれた「セクハラ防止研修会」の菅谷貴子弁護士は「"本当に訴えたいなら証拠を持ってきなさい"というスタンス、おごりがあったのではないかと感じている。世間とのズレを認識していただきたい」と職員たちに語りかけた。
11日には麻生財務大臣の発言も議論を巻き起こした。国会での「(福田事務次官は)はめられたという可能性も否定できない」「セクハラ罪という罪はない」との発言について野党議員から撤回を求められ、「ご指摘があったとおりとするならば撤回させていただく」と撤回に追い込まれた。
こうした問題について、フジテレビの番組に出演した安倍総理は「被害者の方は相当傷を負うと思う。その人の立場になって考えなければならないと思う。麻生さんも直ちに否定・撤回をしたのだと思う」とコメントしている。
元TBSアナウンサーの小島慶子氏は「セクハラの問題は今までも起き続けていたと思うが、今回の問題をきっかけに、多くの人が日常的に話題にして、議論が続けられることになっている。セクハラについてあまり知識が無かった人も、"もしかして自分もやってたかも"とか、"自分はどういう行動が取れるだろうか"など、それぞれに考えをまとめる機会として活かしてほしい」と話す。
また、小島氏は「財務次官という、情報を持っている強い立場を利用し、その情報が欲しい記者に嫌がることをしたというのことが問題。もちろん財務省側に問題がある」とした上で、メディア側の課題を指摘。
「一対一の取材をしなくてはいけないこともあるのに、そこでハラスメントが起きる可能性を前提とした対策があまり取られてこなかったと思う。私が放送局で働いていた頃も、男性が圧倒的に多い職場なので、"記者なんだからそれくらい我慢するもんだろ"とか"男と対等にやるんだったらそんなことで弱音を吐くな"という空気があった。私も"女だから甘えていると言われないようにしよう。こんなことで傷つく自分が悪いんだ。こんなことは当たり前だと思って一人前だ"などと思ってしまっていた。それどころか、"これはおかしいのでは"と思っても、"こんなのなんでもないわ、セクハラされてなんぼよね"と言える方がカッコいいと思ってしまっていた時期もあった。そのベースにはメディアの中にある、"セクハラなんていちいち細かいこと言うなよ"というノリがあったと思う。今回のことを受け、制度面としても文化としても改まるのが大事なことだと思う」。
小島氏が指摘するように、メディアで働く女性110人にアンケートをとった結果、取引先や取材先からセクハラを受けたことがあると答えた人の数は、なんと約8割にのぼっている。
弁護士の太田啓子氏はこの数字について「衝撃的な結果だが、私もメディアで働く女性の知人にセクハラが多い業界だということは聞いていたし、多くの方は"受け流さなくてはいけない"と思っているようだ。それも仕事の一環だし、うまくかわして情報を取ってこそ一人前の記者であると思いながら仕事をしているし、怒ってもいいんだと思えるようになるまで時間がかかったと明かした女性記者もいる」と話す。
「これまで女性記者たちは軽視され、男性記者が受けないような目に遭ってきた。一方、"自分が我慢してきたことによって環境を変えられず、後輩の女性記者も同じ目に遭ったのかと思うと、何もしなかった自分を責めてしまう"という意見も聞いた。女性記者たちが自分を責めているのがやりきれない。構造が変わらないといけない」。
財務省セクハラ問題の被害者が所属するテレビ朝日はその後、「セクハラの訴えに社内で適切な対応ができていなかったことを深く反省し、今後このようなことがないよう社内体制の整備を行う。専務を座長とする特別チームを結成し、社内のコンプライアンス体制を徹底的に見直し、改善策を策定する」とコメント。
また、早河洋会長も局内で働くスタッフに向け「もし皆さんがハラスメントの被害にあった時は迷わず声を上げてください。我々はその声を必ず受け止めます。ハラスメントの被害者を守り抜くというテレビ朝日の基本姿勢には些かの揺らぎもありません」との談話を発表している。
小島氏は「ハラスメントは定義がすごく曖昧で、法律にはっきりと書いてあるわけでもない。だから大事なのは、何がハラスメントなのかが分かることだ。それが分からなかったら被害はなくならない。テレビ朝日は何をハラスメントだと考えているのか。ここからがセクハラだという線は引けないにしても、具体的に示していかないと、自分が守ってもらえるのかどうか分からない。やはり相手には人格があり、自分と同じ人間として尊重するという眼差しを大切にするという原則に照らして、一つ一つの言葉や行動を考えるべき」と訴えていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)