この記事の写真をみる(3枚)

 「金正恩委員長は『朝鮮半島の完全な非核化への意思は確固たるものだ』と改めて表明しました」

 26日に行われた南北首脳会談について、文寅在大統領は27日、前日に金正恩委員長から要請があり電撃的に実現した事を明かした。金委員長と1カ月ぶりに再会した文大統領は「虚心坦懐(わだかまりのない素直な気持ち)な対話を交わした」と語り、北朝鮮が米朝首脳会談に強い意欲を示していると強調した。

 北朝鮮側も国営メディアを通じて会談の様子をいち早く報じ、「敬愛する金正恩同志は、6月12日に予定されている『朝米首脳会談』のために多くの努力を尽くしてきた文寅在大統領の苦労に謝意を表し、歴史的な『朝米首脳会談』に対する確固たる意志を披瀝(ひれき)されました」と文大統領の対応に感謝を示した。

拡大する

 会談で満面の笑みを浮かべる金委員長だったが、文大統領に会うまでその心中は決して穏やかではなかったはず。米朝首脳会談の開催を巡っては、ここ数日で事態が二転三転しているからだ。

 24日、北朝鮮が非核化の第一歩として「豊渓里(プンゲリ)」にある核実験場の廃棄を外国メディアに公開したその日の夜、トランプ大統領は北朝鮮に書簡を送り米朝首脳会談の中止を通告した。この発言を受けた9時間後、今度は北朝鮮が動く。金桂冠第一外務次官は「アメリカが会談の取り消しを発表したことは我々としては意外であり、大変遺憾。我々はいつでもどんな方式でも米国と向かい合って問題を解決していく用意がある」とコメント。これを受け、トランプ大統領も即座に反応し「彼らの出した声明は非常に良いものだった。どうなるか見てみよう。会談は12日の可能性もある」と北朝鮮の声明を評価。中止から一転、会談開催の可能性に言及する急展開を見せた。

 今回、北朝鮮の動きは迅速だった。「一切形にとらわれず会いたい」と文大統領に働きかけ、アメリカとの関係修復を依頼。会談で金委員長は米朝首脳会談に対する不安を口にしたといい、文大統領は「金正恩委員長にとってはっきりしていないのは、自分たちが非核化した場合、アメリカが敵対関係を終息させ『体制の安全を保証する』という意思を確実に信頼できるのか、という心配があると思います」と述べた。

 様々な駆け引きが続く中、アメリカ政府は米朝首脳会談の準備のため、ホワイトハウスのスタッフなど30人ほどがシンガポールに向かう事を明らかにしている。非核化の考え方を巡って溝が埋まらない中、水面下の交渉はどの程度進んでいるのか。トランプ大統領は「北朝鮮との首脳会談に関しては、順調に進んでいると言っておこう。6月12日のシンガポールでの会談で方針に変更はない」と話している。

 米朝首脳会談を巡るここ数日の急転直下の展開について、臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は金委員長の心理を次のように分析する。

 「トランプ大統領の一貫性のなさが、逆に北朝鮮を混乱させている。国と国との話し合いなので政府の高官や役人が下交渉をしていることは明らかだが、他の国と比べてアメリカや北朝鮮はトップダウンの国で、トップが及ぼす影響力は圧倒的に大きい。これだけトランプ大統領が不可解な行動をとると、金委員長としては不安になる。今までそういう相手はいなかったのでは」

拡大する

 また、経済制裁などを背景に北朝鮮が“追い込まれている状況”としたうえで、「トランプ大統領も金委員長も予測不能な人で、その間で予測不能なことが繰り返されると正常な判断が出てくることもある。今までは北朝鮮が突拍子もない事をして周りが困っていたが、今回はトランプ大統領が『会談を中止しますよ?』とボールを投げて決断させている。その中で北朝鮮が韓国に助けを求めたのは、トランプ大統領が主導権を握っているとみていいんじゃないか」との見解を示した。

 一方、会談に応じた文大統領については「コミュニケーション能力に長けている」と評価。「(前回の)南北会談でうまく関係を作ったと思う。2人きりで話した時に、表面的だったとしても人と仲良く話すことがいいことだと金委員長は感じたのではないか。文大統領が信頼感をそれなりに掴んで親和欲求を刺激したことが、その後の中国訪問や今回の南北会談に繋がったのだと思う」と述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

▶︎放送済み『けやきヒルズ』の映像は期間限定で無料視聴が可能。

「けやきヒルズ」の検索結果 | 無料のインターネットテレビはAbemaTV(アベマTV)
「けやきヒルズ」の検索結果 | 無料のインターネットテレビはAbemaTV(アベマTV)
「検索」では気になる番組を検索することが出来ます。
AbemaTV
この記事の画像一覧
この記事の写真をみる(3枚)