
「1日1麺」を自身に課し、大学1年生の頃から「青春18きっぷ」で全国のご当地インスタント麺を訪ねて歩いた1人の青年は2007年、大阪・日本橋のインスタントラーメン専門店「やかん亭」の店主になった。大和イチロウ氏(49)。インスタント麺好きの間では、知る人ぞ知る人物だ。
今まで食したインスタントラーメンは1万食を超えるというが、健康に害はないのか? 誰もが抱く疑問をぶつけてみると「毎年欠かさずに健康診断を受診していますが、問題は何一つありません」と涼しい顔。では、体重は? 「学生時代と変わらない58~59kgをキープしています。体形も変わらないので、洋服に関しては今も同じものを着ています」と大和氏は続けた。「学生時代と同じ洋服」というのは、ある意味、問題でもあるが……。
旅行が好きな大和氏がインスタントラーメンと出会ったのは18歳、東北を電車で旅行しているときだったという。
「青春18きっぷで山形から岩手に入った辺りです。国鉄の労働組合が製造していた醤油味のインスタントの袋麺。今考えるとショボい味ですが(苦笑)、土地土地の水や空気、特徴を地元の人々と共有できる気がして、半野宿の貧乏旅行で感じていた『旅先での心細さ』を和らげてくれるには十分な味と温もりでした。それまでカップラーメンのお世話にはなっていましたが、ご当地の、さらにインスタントの袋麺なんて見たことなかったので、お土産に買って帰ったら友達も喜んでくれました」
「世間の常識をひっくり返すため」始まったセルフ実験
そんな大和氏が「1日1麺」を始めたのは19歳のとき。自分が好きなものが、世間的には悪。つまり「健康に悪い」と決めつけられていることが嫌だったからだ。
「実際、食べていて体に悪いという感じはなかったので、ならば証明しようと思ったのが“1日1麺”を始めたきっかけ。これはもう自分の体で証明するしかない。自分の体を使ったセルフ実験ですね」
大学を卒業すると、国家資格である鍼灸師の資格を取得するため、専門学校に3年間通うことになった。この期間で栄養学を学んだことが、その後のセルフ実験にプラスになったと振り返る。
「もともと健康産業に興味がありました。資格取得のために栄養学を学んだことで、インスタント麺を食べる際に栄養バランスを考えてアレンジを加えるようになりました。さらに鍼灸は医食同源の思想を大切にする東洋医学。医食同源はバランスを重んじる一方、食べるものや食べ方に関する制限はないんです」
バランスさえ心掛ければ「何を食べてもいい」
根っからのポジティブな性格から、東洋医学の教えを「バランスさえ考慮すれば、何を食べてもいい」と解釈した大和氏は、インスタント麺に対する「学術的なお墨付き」を得ることになった。とはいえ、インスタント麺を食べつつ、栄養バランスを両立する方法は何だったのか? そこには、あるスーパーフードの存在があった。
「卵(とくに黄身)です。必須アミノ酸や抗酸化成分を含んでいるので、老化防止や美容効果も期待できますし、卵2つで1日の1/3のたんぱく質を摂取できます。カロリーを気にされる方もいますが、インスタント1袋で300kcal、卵1つで150kcal。スープを飲んでも1食500kcalにも満たない程度(成人男性1日の摂取カロリーは2600kcal、成人女性は2000kcal)ですよ」
鍼灸師としての仕事は、現在の店を始めた2007年に区切りをつけた。さらに製麺メーカーとの仕事が増えた数年前からは、「1日5麺」の日もあるという。そんな大和氏の健康状態に、常連のお客さんからも懐疑的な声が上がっているという。
「常連のお客様からは『いつ死ぬんだ?』と冗談でよく言われます。しかし、インスタント麺は体に悪いというのは、1度出たらなかなか消えない都市伝説みたいなものです。私が健康体でいる以上、私が生ける証。お客さんには日頃から、私がもし健康を害したら食べるのを止めてくださいね、と話しています(笑)」
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