
6月17日に開催されるK-1さいたま大会に向け、格闘技好きで知られるアルコ&ピースの平子祐希に上原誠と対談してもらった。新生K-1のヘビー級を支えてきた上原は、6.17さいたまでMMAの強豪である加藤久輝と対戦。世界で闘うために磨いてきた強さとはおかなるものか、平子が迫る。
(構成・橋本宗洋)
■「大きくて強い」ヘビー級は、男としての憧れ、ロマンをかきたててくれる(平子)
平子 今回は6月のK-1に出る選手との対談ということで、上原選手を希望させてもらいました。
上原 ありがとうございます。
平子 やっぱりヘビー級の「大きくて強い」って魅力があるんですよね。男としての憧れを刺激されるっていうか。「ベンチプレス何kg挙げるんだろう」とかいちいち調べちゃいますもんね。「そんな人のパンチもらったらどうなっちゃうのか」なんて想像したり。
――アスリートというだけでなく「超人」というか。
平子 ロマンをかきたててくれるんで。
上原 その超人と闘っていかに勝つかが日本人ヘビー級のテーマですね。でも勝つだけじゃなく迫力も見せていきたいし。ヘビー級って、的がデカいんで打てば当たるんですよ。でも本当にジャストミートしないと倒れない。そのためには“刻んで”アプローチするのも大事で。ゴルフみたいなもんです(笑)。
――KOはホールインワンではないんですね。
平子 ロールプレイングゲームみたいですね。外国人のトップ選手っていうのが大ボスで。体が小さい日本人はレベル上げて、装備を揃えて立ち向かうと。その立ち向かう時も刻んでいくし。だから最後の一撃を決めた爽快感も独特ですよね。
上原 レベルアップしていかないと勝てないですから。僕の場合は間合いが一番変わりました。でも間合いって、練習では身につかないんですよ。実戦で感じるしかない。間合いが分かると自分の攻撃が当たるようになるし、相手の攻撃が当たらなくなるんです。これは3年とか5年じゃ分からないところで。
――それこそ経験値を積まないといけない。
上原 そういう意味で、今が一番よくなってますね。練習方法もいろいろ試して、ロードワーク中心にしたり。単にパワーが付いたらパンチ力が上がるかっていうと、そういうことでもなかったりして。
いろいろやって、今が一番強いって言えますね。スタミナで言ったら昔と倍くらい違いますし。
■「一流は6割の力で8割出せないといけない」パワーはあればいいんじゃなくて、使い方。(上原)
――平子さんがやられていたラグビーもそうだと思うんですが「肉弾戦」に見えて細かい要素も重要という。
平子 スクラムでも、首で相手を持ち上げようとしますからね。ちょっと重心が上がると押されちゃう。
上原 デカい相手にぶつかる勇気も必要ですよね。それもやっぱり経験なんです。「ここにいれば当たらない」っていうのが分かれば余計な力を使わないし、ということは疲れない。
平子 ヘビー級だとガードの上からもらった攻撃でも効きそうだし、スタミナにつながってくるんですね。
上原 「来る!」と思うと呼吸とか体が固まるんで。
平子 鉄球が飛んでくるみたいなもんですもんね。そりゃ固まりますよ。そういえば、昔の上原選手の映像を見ると、失礼ながら「こんなブンブン丸だっけ?」って思うんですよ(笑)。そこから今の試合を見ると、本当にバランスがよくて。だからパンチの強さもより活きるんでしょうね。
上原 相手によるんですけど、蹴って間合いを作ることもありますね。それで自分の間合いができたらパンチで倒しにいく。僕は今まで、体が小さい分フルスイングでパンチを打ってたんですよ。100%の力で打って、でも相手に伝わるパワーは60%とかなんです。ただ思いっきりボールを投げても球が速くなるわけじゃないのと一緒で。
平子 なるほどなぁ・・・。
上原 たまたま、ソフトバンクホークスの工藤(公康)監督とお話したことがあって、その時に「一流は6割の力で8割出せないといけない」って言われて。それが気づきになりましたね。パワーはあればいいんじゃなくて、使い方なんですよね。
平子 この理論は芸人の世界にも当てはまりますよ。若手がガッチガチにネタ書いて、ガッチガチに練習して、頭の中に完全にトーク仕込んで劇場に出てもたいがいうまくいかないですから。間合いじゃないですけど、スーッと舞台に出て「今日はお客さん、こんな感じか」っていうのをサラッとやったほうがウケにつながりやすい。「これをやらなきゃ」って凝り固まると、雰囲気に合わないこともあるので。
――力んだらスタミナ切れも起こすでしょうし(笑)。
平子 そこにキャリアが出るんですよね。ベテランの大御所の人達なんかは出番直前まで雑誌読んでて、ふわっと舞台に出ていってドーンとウケて帰ってくるんですよね。60の力で80のウケを取ってくる(笑)。脱力なんですかね。
上原 どこで力を抜くか、どこで入れるかですよね。
平子 それが倒すことにつながるし、倒そうとするっていうのは見せる意識もあるってことだと思うんで、それは面白いですよね。




