Fリーグ挑戦を決めてから6年間プレーし続けた立川・府中アスレティックFCを退団し、バサジィ大分に加入した上福元俊哉。新天地ではキャプテンを任されると、開幕戦では移籍後初ゴールをマーク。順風満帆の船出となったが、試合後のフラッシュインタビューでは感情を抑えきれず涙する場面があった。大きな環境の変化があった中で、彼が背負っているものとは――。
新たな環境でも変わらないアツい気持ち
上福元俊哉、31歳。彼の第一印象はとにかくアツい。府中アスレティックFC(現:立川・府中アスレティックFC)に在籍していた頃から、ピッチ内外問わず味方を激しく鼓舞する姿を一度は目にしたことがあるはずだ。
ミックスゾーンでも「味方のために走る」、「味方のためにゴールを獲る」、「味方のために体を張る」とおなじみの言葉がいつも口から出てくる。なんとも男くさい選手だ。
そんな彼が、今季開幕前に一大決心をした。6年間、戦ってきた府中の退団を決めたのだ。「アスレでは全力で取り組んできました。その中でこのままではダメだ。何かを変えないといけないと感じたんです」。移籍が難しい年齢にもかかわらず、手を差し伸べてくれたのが再建中のバサジィ大分だった。
大分は今季から伊藤雅範監督が復帰し、昨季の12位から立て直しを図る。上福元にとって初めての土地ながら、多くの縁がある場所だ。
「伊藤さんは6年前に僕をアスレに入れてくれた人ですし、弟(東京ヴェルディGK上福元直人)も昨年まで大分(トリニータ)にいました。そういう意味で、本当に大分はいろいろな縁がある土地だなと思っています」
新たな環境下で、上福元はチームのキャプテンを任された。「難しさもありますが、俺に任せろという気持ちを持っています」と、プレッシャーの中でも彼は変わらない。
開幕戦となったヴォスクオーレ仙台戦でも、いつものようにベンチから一番大きな声でチームに力を送り、ピッチ上では誰よりも走り、誰よりも体を張って攻撃の起点となる。移籍後初ゴールを決めた場面では、真っ先にサポーターの下に駆け寄り、そのキャプテンマークを外して高らかに掲げた。「俺がこのチームを引っ張っていくんだ」という強い意思表示のように感じられた場面だった。
チームは昨季の悪夢を払拭するように、開幕戦で白星を飾った。試合後のフラッシュインタビューで上福元は感極まり、涙を流す場面があった。
「(なぜ涙が流れたか)わからないですね(笑)。でもどの試合も大事ですが、開幕戦は特別です。この試合で勝ったからといって優勝するわけではないですが、最初の試合で勝つか負けるかの違いは、この6年間で身に染みています。その中で1つ勝ててホッとしましたね」
チームを引っ張っていく決意をしたからこその涙だった。そんな彼もピッチを離れれば父親。翌日は父の日ということもあり、家族の話題に触れると「今単身赴任なんですよ。子どもも8カ月で小さいのであまり出歩くのも難しいので、今日もきていません。(移籍してから)この2カ月で1度しか会えていないですね」と少し悲しい顔に。
「ただ、結果を出さないと帰れないですからね(笑)」
チームを背負い、家族を背負って、上福元はこれからも「仲間のために」走り続ける。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
(C)AbemaTV
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