クラブ名が「立川・府中アスレティックFC」となって初めて迎えたホームゲームは、これまでのFリーグでは感じられなかった特別感を味わえるものだった。昨年まで使用していた府中市立総合体育館がFリーグ基準に満たないというホームアリーナ問題により、府中から立川に拠点を広げるなど、多くの問題を抱えながらも逆境をチャンスに変えた現場の声を聞いた。
フットサルはコンテンツとしてまだやれる
今シーズンから本拠地を立川に移し、クラブとして再スタートを切った立川・府中アスレティックFCが、ホーム開幕戦を迎えた。ペスカドーラ町田との東京ダービーは、白熱したシーソーゲームとなり、敗れはしたが好ゲームを演じた。しかし、それ以上に観客の心に残ったのは、立川・府中が仕掛けたこれまでのフットサルでは味わえなかった様々なエンターテインメントだった。
試合開始前、アリーナが暗転するとLEDライトやミラーボールを使った光の演出が開始。その鮮やかなパフォーマンスにスタンドからは歓声が上がる。アスレファンタジスタ(立川・府中のチアダンスユニット)が、LEDライトが内蔵された特殊なボールを使ったパフォーマンスでさらに会場を盛り上げると、いよいよ選手入場。突如始まったオープニングイベントだったが、スタンドの観客も携帯のライトを振ってさらに場を盛り上げる。アウェイチームが整列した後、スモークとともに今度は立川・府中の選手が1人ずつスポットライトを浴びてピッチに入っていく。今までのFリーグの会場ではなかった、特別な空間がそこにはあった。
試合中にも多くの仕掛けがあった。「スタンドから見るとタッチライン側が見切れる」という観戦上の懸念点が指摘されていたが、アウェイサポーター席の上部にはピッチサイドからの映像を流すビジョンが設置されたことで、すべての局面がより見やすい環境となった。さらに立川・府中がゴールをあげた際にはLEDライトとスモークが吹き出すなど、多くの演出が行われた。
「立川・府中アスレティックFC」となって最初のホームゲームは大成功だった。ほかのアリーナスポーツと同様に、フットサルでも演出で観客を楽しませることが可能だと示したのだ。しかし、ここまでの道のりは決して楽ではなかった。
今回、様々な演出を手掛けてきた立川・府中の千葉岳志会長は、ホーム開幕戦を迎えるまでの様々な苦労を明かした。「昨年、我々はアリーナの問題があり、ディビジョン1に残れるかどうかの瀬戸際にいました。その中でここ、立川に場所を移して生き残れることになりました」
そもそも立川・府中はこれまで郷土の森総合体育館(府中市立総合体育館)を使用してきたが、正規サイズのコートを体育館内に設置できないことから、Fリーグでの使用を認められなくなった。立川市に拠点を移して再スタートとなったが、今度はコストの面での問題が発生する。
「これまでは市の体育館であり、非常に安い金額でホームゲームを開催することができました。一方で今度は民間の体育館。今までよりも多くのコストが掛かってしまいます」
しかし千葉会長は、このピンチをスポーツビジネスとしてのチャンスと捉えたという。これまでは市の体育館を使用していたことで様々な制約、制限があった。しかしアリーナ立川立飛は民間の体育館であり、使用に関する制限や制約が緩和されたことで様々な企画を実施しやすくなった。
「フットサルというコンテンツは素晴らしいものがあります。ただ、何かがおかしくて興行として成り立っていません。今回の件があり、思い切ってビジネスとして考えようと思ったんです。アメリカのNBAや日本のBリーグを目指そうと。攻めようと考えました」