すべては、あそこから始まった――。1996年夏。当時サッカー選手を目指していた甲斐修侍の元に、1本の電話が入った。「シュウ、フットサルやらへん?」。電話をかけてきたのは甲斐の中学時代のチームメートだった。

 銀河系軍団vs超個性派集団

 山梨県の山中湖にあるフットサルコートで行われる大会に、甲斐は参加した。そこでブラジルが発祥の5人制サッカーに興味を持った甲斐は、コートのスタッフとして働きながらフットサルを始めた。しばらく経つと、甲斐はチームを結成する。

 その名は「AZUL(アズー)」。

 甲斐を始め、「フットサルで日本一になる」という志の下に集まったチームは、ほとんどのチームがミニサッカーの域を出なかった時代に、ブラジル人指導者から習った本格的なフットサルで異彩を放った。

 だが、アズーは2年ほどで解散。そこから枝分かれする形で、2つの新たなチームが生まれる。甲斐をリーダーとするカスカヴェウと、チームメートだった関野淳太が立ち上げたP.S.T.C.ロンドリーナだ。1999年のことだった。

 ブラジルの地方都市の名前を冠した両チームは、日本フットサルのトップシーンを走ってきた。当時はインターネットもほとんどない時代だ。本場のフッサルを求めて、地球の裏側に飛んでは、貪欲に学びながら強くなってきた。技術、戦術、情熱。すべてをぶつけ合う両者は日本一を争う、最高のライバルとなった。

 両者の関係は20年が経った今も続いている。2007年のFリーグ参入にあたって、カスカヴェウはペスカドーラ町田に、そしてロンドリーナはJリーグクラブと提携して湘南ベルマーレとチーム名を変えた。

 開幕時こそ優勝候補に数えられたものの、どちらも順風満帆だったわけではない。プロクラブの名古屋オーシャンズを筆頭に、豊富な資金力によって有力選手を集め、環境を整備したライバルたちに出遅れてしまったのだ。

 しかし、町田と湘南は異なるやり方ながらも、着実に頂点への階段を上っている。

 町田は数年前から森岡薫、室田祐希、イゴールなどFリーグで十分な実績を誇る即戦力を積極的に獲得。人気と実力を兼ね備えたスター選手が多数連なるチームは、まさしく「日本フットサル界の銀河系軍団」だ。

 一方、湘南は無名選手を発掘して育ててきた。競輪選手の父親を持つ小門勇太、152cmのFリーグ最小選手・林田フェリペ良孝、超攻撃的GKのフィウーザ……。どうやって集めたのかと思うぐらいの「超個性派集団」だ。

 町田は2016-17シーズン、2017-18シーズンと2年連続でプレーオフのファイナルに勝ち上がった。今シーズンもFリーグ得点王のクレパウジ・ヴィニシウスと、ブラジルで全国大会優勝経験のあるアウグストと大型補強。Fリーグ優勝に向かって邁進している。

 湘南は昨シーズンのFリーグで主役級のインパクトを残した。開幕から連勝街道を突っ走ると、最後まで勢いは衰えず。プレーオフは準決勝で涙を飲んだものの、これまでの弱小軍団というイメージを覆し、「湘南が強くなった」ことを印象付けた。

 この両者の試合は「境川決戦」と呼ばれる。東京都と神奈川の都県境にある境川を挟んでいることが由来だ。

 20年間ずっとしのぎを削ってきた、同じDNAを持つ2つのチーム。兄弟のようなチームだからこそ、「絶対に負けたくない」という気持ちは強い。7月1日、町田市立総合体育館で、文字通りの「決戦」が幕を開ける。

文・北健一郎(SAL編集長)

(C)AbemaTV

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