持ち時間5分、1手につき5秒が加算される超早指し戦「AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治」の予選Bブロックの1位決定トーナメント1回戦(三番勝負)が7月1日に放送され、大橋貴洸四段(25)が優勝候補として名を挙げられていた早指しの雄・山崎隆之八段(37)を2連勝で下し、1位決定戦へと進出した。最年少棋士・藤井聡太七段(15)と同期で、プロ入り後に唯一、藤井七段から2勝を挙げている男が、超早指し戦の舞台でその実力をいかんなく発揮した。
昨年度のNHK杯とJT杯将棋日本シリーズ、2つの早指し棋戦を制した山崎八段を、大橋四段が翻弄した。まさかの2連敗を喫した山崎八段は「いや…これは…今の段階では、力の差を感じてしまった負け方ですね」と、呆然するしかなかった。それほど大橋四段の力が充実し、安定していた。
三番勝負の1局目。なかなか類型のない将棋になったが、解説の深浦康市九段が「大橋さんの高級なテクニックが目を引いた」と絶賛するほど、終盤になるほど切れ味が増した。当の本人は「とにかく時間配分が難しかったですね」と苦笑いしたが、混戦模様の中でも落ち着きと強さが同居した指し回しだった。
続く2局目。山崎八段が気合を入れ直して臨んだが、むしろ大橋四段が72手で完勝した。序盤から徐々にリードを広げ、派手な手も繰り出し、局面を落ち着かせなかった。深浦九段も「この運びは若手離れしていますね」と舌を巻いた。優勝候補の一角を倒し「一番いい結果が出せてよかったです」と笑顔で話した25歳。昨年度の勝率が8割近かった新鋭の評価は、今回の快勝劇でさらに高まるに違いない。
◆AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治竜王が着想した、独自のルールで行われる超早指し戦によるトーナメント。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生竜王が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選は藤井聡太七段が登場するAブロックからCブロックまで各4人が参加し、各ブロック2人が決勝トーナメントへ。シードの羽生竜王、久保利明王将を加えた8人で、最速・最強の座を争う。
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