17日に発足した麻雀のプロリーグ「Mリーグ」。とかく賭け事のイメージが強い麻雀だが、実は今、"クリーンな麻雀"に注目が集まり始めているという。AbemaTV『AbemaPrime』では、最新の麻雀事情を取材した。
■"賭けない、飲まない、吸わない"で女性殺到
女性たちの楽しそうな声が響き渡るのは、銀座の一角にある女性専用の麻雀教室「銀座健康カルチャークラブ」。料金は5時間のレッスン1回あたり2500円(税別)で、去年7月にオープン以来、20~80代までのおよそ300人が通う人気教室だ。
参加の理由を尋ねてみると、「脳の活性化になると思って始めた」「兄弟で集まって、毎週やっているのに毎回喧嘩していた。だからまあ面白いんだろうなと」「父親がなかなか帰って来ない、ちょっと楽しそうだなという思いがあった」「やってみたかったけど雀荘はタバコを吸ってそうなイメージがあったので」。ゲームとしての麻雀には興味はあったものの、どこか足を踏み入れるのをためらっていた人が多いことを伺わせる。
そこでこの教室では、"賭けない、飲まない、吸わない"をコンセプトにし、それが見事に当たった。会員の職業は金融や保育士など様々で、「銀座」という立地と見知らぬ人とのおしゃべりも教室に通うモチベーションになるようだ。「GINZA SIXでのり弁を買ってここに来る。もぐもぐタイムです」「こちらに来ると麻雀は何て奥が深いんだろうというのを感じる。もう真剣になる」と笑顔で話してくれた。
■プロを打ち負かす高校生も
"麻雀界の藤井聡太"を目指す子どもたちも急増している。
全国90か所に教室を展開、会員数3万6千人を誇る麻雀教室「ニューロン麻雀スクール」も、21年前のオープン当初は会員数がほぼゼロだったというが、現在では1150人の子どもが通う。スマホの麻雀ゲームの人口は200万人以上に上り、そこから興味を持つ子どもたちが現れ出したようだ。ある男の子は、バッグに麻雀の戦略本をいつも入れていると話す。
とあるスーパーの中の教室は、18歳未満は無料。買い物ついでに子どもを預けられると、親にも大人気だ。小学2年生の子どもを持つ母親は「やってみるとすごい集中力でびっくりしている。子どもの知らない部分を引き出してもらえた」、別の父親も、「4人でやるので、集団生活が身につくと思う」と肯定的だ。
この教室では、円滑にゲームを進めるために礼儀作法が重んじており、マナーを徹底的に教え込む。この日、初めてやって来た5歳の男の子には、講師が「向かいの山が取りにくいの。皆が取りやすいように前に出してあげる」と、牌を右斜め前に並べるよう教えていた。
プロ顔負けの腕前を持つ高校生も通う。麻雀歴12年の松原一生さん(16)は、講師を務めるプロ雀士にも圧勝。プロ2人と、世界選手権3位の手牌を読み切り、見事に勝ちを収めていた。対戦相手のプロ雀士・千貫陽祐さんは「年齢に似合わず、冷静な麻雀」、ニューロン代表の池谷雄一氏は「松原君は守備を常に考えていて、その前提で攻撃の隙間を見つける」と絶賛する。
4歳から麻雀を始めた一生さん。強さの秘密は、自宅の麻雀専用ルームと、そこに置いてある25万円の全自動卓だ。父・利仁さん(43)は「最初は僕が好きで買ったが、子どもたちを誘ってやるようになった」と語る。利仁さんもアマチュアの大会で数々の優勝経験を持ち、連休になると家族4人が徹夜で卓を囲むこともあるという。一生さんも、「親子のコミュニケーションが増えて良いと思っている」と話す。
■「"プロになりたい人はいますかと聞いたら、手を挙げた人はゼロだった」
そんな一生さんの夢は「教師」か「プロ雀士」。「どっちか選んでとなったら、先生かな。お父さん、お母さんに小遣いなどを今までもらってきたからその恩返しができるように、お金を貯める。麻雀のプロは活躍できないと意味がないので」と話す。
若い才能の発掘を担う学生麻雀連盟理事長の正能和仁氏は「中高生の大会を開いた時、"プロになりたい人はいますかと聞いたら、手を挙げた人はゼロだった」と話す。
千貫さんも、タイトル戦の賞金獲得者は上位4名程度で、大規模な大会でも賞金は100万円程度。多くのプロ雀士が兼業し、生計を立てているという厳しい世界だと明かす。
そこで今回発足したMリーグでは、既存の5つのプロ団体からメンバーを選び、ドラフトによって名チーム3名を選抜。最低年棒400万円を保障する。チェアマンを務めるサイバーエージェントの藤田晋社長は「少なくともプロ雀士の方が生活するためのギリギリの年俸は保証し、活躍次第で交渉し、上げていく」と話し、「若い子でスター選手が出てくるとまた盛り上がる」と、次世代の雀士たちの登場に期待を込めた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)