これまで幾度となく跳ね返されてきた壁もすんなり突破した。三役は今場所で通算10場所目、昨年春場所からは9場所連続でその座を守っている御嶽海だが、三役での2ケタ白星は過去に一度もなく、9勝が4回と実力がありながらこれまで大関取りの足場作りすらできずにいた。
2ケタにリーチを懸けた十日目は初顔の輝を全く寄せつけず、一方的な相撲で寄り切ってついに無傷のまま、10勝目を挙げた。「めっちゃうれしいですよ」と届きそうで届かなかった目標を達成し、素直に喜んだ。この日は唯一、1敗で追っていた平幕の朝乃山が北勝富士に敗れて2敗に後退。さらには優勝候補の一角だった大関高安は十日目、十一日目と連敗。後続に2差をつけた全勝の御嶽海がいよいよ初優勝に向け、独走態勢に入った。
「明日からクールダウンだな」。嫌でも感じる武者震いを振り払おうとするが、表情からは自然と笑みがこぼれる。十一日目は過去4戦全敗と苦手にしている魁聖が相手だったが、勢いをそのままに完勝、11連勝を遂げた。
所属する出羽海部屋は角界の保守本流であり名門だが、同部屋からの優勝となると1980年初場所の横綱三重ノ海を最後に38年も出ていない。入門前の東洋大時代は学生&アマチュアの両横綱に輝き、2015年春場所、幕下十枚目格付出しで角界入りした御嶽海が伝統部屋の歴史を塗り替えようとしている。賜盃をつかめば、来場所は一気に大関取りの場所となるのは確実だ。3横綱、さらには新大関が不在となった場所を25歳の関脇が盛り立てる。
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