「Netflix」や「Amazonプライム・ビデオ」など、多くのサービスがしのぎを削るネット動画"戦国時代"。中でも一際注目を集めるのが「SHOWROOM」だ。 パソコンやスマホを使い誰でも簡単にライブ動画を配信・視聴できる仮想ライブ空間は人気を呼び、アプリのダウンロード数は320万を突破している。
5年前、26歳の時にサービスを立ち上げた代表取締役社長の前田裕二氏は時代を切り拓く若き起業家として脚光を浴びており、実業家の堀江貴文氏はじめ、多くの著名人とも親交がある。AbemaTV『AbemaPrime』では、そんな前田氏に話を聞いた。
前田氏にオフィスを案内してもらうと、いきなり目に飛び込んできたのは焼酎やウイスキーなどのボトルがいくつも置かれているバーカウンター。「社員同士のコミュニケーションって、業務内容によってかなり分かれていっちゃう。ブロックごとに分かれていって、村社会化しちゃうじゃないですか。村社会化を防ぐために、なるべく自然に部署間を超えてコミュニケーションが起こる場所を設計したいとすごく思っていて、社員に"何やってんの?"みたいに話したりしている」。
そんな前田氏に社員たちも親近感を抱いているようで、イベントグループの石川さんは「前田さんのコラムや記事を見ていて、会う前はけっこう強面な感じ、ちょっと迫力がある感じだと思っていた。実際に最終面接でお会いした時は、すごくおおらかで器の広い方だなと良いギャップを感じた」と話す。また、VRチームエンジニアの加藤さんも「僕は前田よりも年齢は上だ。普通、年上の人に憧れることは結構あると思うが、年齢とか関係なく憧れの人」とその人柄を絶賛する。
SHOWROOMの特徴について前田氏は 「YouTubeとかを僕らは"非同期"と言っているが、発信側と受信側で同じ時間を共有してないですよね。"ねえヒカキン"と呼んでも返ってこないですよね。発信側と受信側で同じ時間を共有してますってことが大事で、返ってくることによって得られる何らかの快楽ってありますよねということで設計している」と説明する。
ただ見るだけではなく、視聴者も参加できるライブ配信を中心に他のメディアとは一線を画す存在となったSHOWROOM。配信者は「ギフティング」と呼ばれるアイテムやコメントによる応援を受けることができ、その一部を活動費に充てる事も可能なシステムだ。中には月に1000万円を売り上げる配信者もいるという。
前田氏は、これから来る5G時代に動画市場の大きなチャンスが到来するとみている。
「まずこのデバイス(スマホ)で動画を見ると、電池がめっちゃ減るじゃないですか、単純な話で。あと、すぐ通信制限がかかるじゃないですか。そんな状態では、テレビと同じレベルの広告市場規模になるわけがない。まずは物理的な面、ハード面のインフラのストレスを減らさないといけないと思っているので、5Gにはめちゃくちゃ期待しているし、理論上速度が1000倍で遅延が1/100になると言われているので、制御をする主体をデバイスじゃなくてサーバー側にすることが可能になってくる。別の場所で、リアルタイムでデバイス側の電力を食わないような省電力設計もできる。つまり何が言いたいかというと、テクノロジーが進化していけばネット動画メディアにまつわるストレスって大きく減っていく。5Gがちゃんと入ってきて、ストレスがなくなったとしたら、そこから一気に音を立てて市場が入れ替わるというか、モバイル動画市場における広告ビジネスがびっくりするくらい一気に伸びると思っている」。
取材班は、前田氏にネットニュースの未来についても予測してもらうと、「1対1000万とか1対nで、大衆に向けて情報を最大公約数的に発信する、まさにAbemaNewsのようなあり方をAだとすると、もっと自立分散型の、人のレベルによって変えていくとか、コミュニティ毎にそれぞれのオピニオンがあって全部違うみたいな、1000コミュニティ、1万コミュニティ、10万コミュニティを作っていくBがある。つまり、中央集権型のニュースと自立分散型のニュースに分かれていく」という答えが返ってきた。
「自立分散型のニュースの中で面白いニュースリーダーが現れたらAにも出てくる。Aの人たちが中央集権型のものだけじゃなくて、ある時はBの文脈で議論する。たとえば村本大輔さんが議論したいと思う100人のお客さんと議論するようなニュース番組もあってもいいかもしれない。でもたまに1対nの、たくさんの聴衆が見ているような中央集権型のニュース番組に出て、もっと大きな影響力を持って、たくさんの人たちに意見を発信するようなことがあってもいいかもしれない。この行ったり来たりが次のニュースメディアのあり方として成立していくと思っている。高級レストランに行きたい気持ちと、スナックに行きたい気持ちは別物であって、何ならレストランに行った後、スナックにハシゴすることもあるわけで、ニーズが別。ポイントはBがAを倒すわけではなく両方混在すべきで、さらに言うと双方向のAとBの行き来によって両方の媒体価値が上がっていくことが起きると思っている」。