「今の政治課題に取り組むにあたり、安倍総理中心にしっかりした取り組みを進めていくことが適切だと判断しました」
急遽開いた会見で総裁選不出馬を表明したのは、自民党の岸田文雄政調会長。西日本豪雨や北朝鮮外交など、今ある政治課題を理由に安倍総理を支持する考えを示した。
しかし岸田氏は去年、総裁選出馬を視野に入れ大臣の職から離れている。当時、「“安倍時代”もいつかはこの後が巡ってくるわけであります」（去年4月）、「権力を謙虚に使うということこそ、政治が国民から信頼を得る上で大変重要なポイントではないか」（去年7月）と述べ、「（憲法）9条を今すぐ改正することは考えない」（去年5月）、「経済政策における格差といった負の側面に対して、適切に対応することが重要なのではないか」（去年7月）と安倍総理との政策の違いもアピールしてきた。
ところが国会閉会後、岸田氏は安倍総理と会談を行うと一転、総裁選不出馬を決めた。それどころか、政策が異なるうえ総裁選への立候補を明言していない安倍総理の支持を表明したことになる。
岸田氏の出馬見送りで、総裁選に意欲を見せているのは安倍総理、石破茂氏、野田聖子総務大臣の3人。しかし、野田氏は20人の推薦人が集められるか苦しい状況にあり、安倍総理と石破氏の事実上の一騎打ちが濃厚だとみられている。
なぜ岸田氏は態度を急変させたのか？『けやきヒルズ』（AbemaTV）に出演したテレビ朝日政治部の細川隆三デスクは、岸田氏の心境について「致命的な傷を負わない方がいいという判断があったのでは」との見方を示す。
「安倍総理も石破さんも勝負を懸けている中で、勝ちを目指していない岸田さんは弱い。ANNの世論調査を見ても、次の総裁に誰がふさわしいかというと小泉進次郎さんが28％で頭ひとつ抜けていて、安倍総理が22％、石破さんが23％でトントン。岸田さんは大きく水をあけられて4％で、地方票でもどれくらい取れるのかというところ。お寒い結果になってしまうと、ポスト安倍として次に繋がる芽もなくなってしまう。岸田文雄という名前は知られていてもどういう政治家なのかまだ知名度は低く、総裁選はその知名度を高める絶好の舞台だが、致命的な傷を負ってしまうと疑問符が付いてしまうと考えたのでは」
一方、「知名度がない中では個性を見せていく必要がある」と指摘するのは慶応大学特任准教授の若新雄純氏。負け戦でも上手に立ち回ったとして小泉純一郎氏の名前を挙げ、「小泉さんが総裁になる前は何回も負け戦をしていて、“変人”というレッテルを貼られていた時もあった。その変人であるところから認知されていって、彼がどういう政治家なのか、どういう背景があるのかという基盤が作られたと思う。（岸田さんは）個性を発揮する負け方を練れなかったのでは」と述べた。
これを受け細川氏も“負け方”に言及。「岸田さんは伝統的なハト派の宏池会にいる人で、政策面では安倍総理や石破さんとは違う部分がある。自民党の中でそういった意見もあるのに、それをあえて出さない。もしボロ負けしたとしても、自分の信条を貫いていけば芽はあったのかもしれない」とした。
では、岸田氏の不出馬表明によって一騎打ちが想定される、安倍総理と石破氏の争いはどうなるのか。現在、安倍総理を支持しているのは細田派（94人）、二階派（44人）、麻生派（59人）、そして岸田派（48人）で、一方の石破氏は石破派の20人だ。また、竹下派（55人）や石原派（12人）、無派閥（73）の多くも安倍総理を支持すると言われている。細川氏はその背景に人事があるとし、「総裁選が終わると人事があるので、勝ち馬に乗ろうとみんな意識してしまう」と指摘する。
安倍総理の支持派は竹下派や石原派、無派閥を抜いたとしても6割を越えるため、圧勝とも言われている。そこで、前回の300票から405票に増えた“地方票”が注目されるが、それでも安倍総理の優位は変わらないと細川氏。「安倍総理は、議員票では横綱相撲だが党員票ではチャレンジャーで、地方議員との懇談をマメに行っている。石破さんは党員票で6割以上を取らないといけない上に、安倍総理支持に竹下派、石原派などが乗れば、300票を軽くとらないといけない。これはハードルが高い」との見方を示した。
（AbemaTV／『けやきヒルズ』より）
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