2017/2018シーズンでバルドラール浦安を退団した荒牧太郎は、今シーズンからヴォスクオーレ仙台でキャプテンとしてプレーしている。仙台は昨シーズン9位だったとはいえ、Fリーグで2年連続最下位を経験したクラブ。日本代表経験もある33歳のベテランがなぜ、“ステップダウン”ともいえる移籍をしたのだろうか――。
日本フットサル界の強化、発展に貢献したい
荒牧太郎には、以前からずっと掲げてきた大きな目標がある。それは「日本のフットサル界の強化、発展に貢献すること」。
仙台への移籍は、その目標を実現するためのものだった。
「仙台から必要とされてオファーをいただいたことと、僕がいつも考えている、日本のフットサル界の強化と発展に貢献したいということ(が移籍を決めた理由)。本気でトライするんだったら、仙台という今まで成績のよくなかったチームを強くすれば、誰が移籍して(チームの成績が)よくなったのかは一目瞭然ですから、大きなチャレンジをしようと思いました」
では、どうすれば仙台は強くなれるのだろうか。荒牧は最初のステップとして、「誇り」というキーワードをテーマにチームをけん引しているという。
「仙台の選手たちの置かれている環境やクラブのスタッフの環境は、まったく悪いものではないんです。でも、ほかのチームを知らない選手たちは『隣の芝は青く見える』じゃないですけど、自分たちの置かれている状況はよくないんじゃないかと思っている。もっといい監督、いい選手、いい仲間たちがいるんじゃないかと、自分たちのことを信じ切れてないのかなという印象がすごくあります」
自信がない選手の姿に直面した荒牧は、彼らに「誇り」を持つことの大切さを伝えようと考えたのだ。ただし、一言で「自信」や「誇り」といっても、果たしてそれは簡単に身につくものなのだろうか。
「練習でハードワークをどんどん積み重ねることで、自信や誇りが出てくると思う。ほかの人を気にする前にまず自分にフォーカスして仕事していこうと言い続けています」
つまり、他人の評価を気にしたり、他の選手やチームのことをうらやんだりするのではなく、まずは自分たちが目の前の試合に勝つために必要な作業に徹していくべきだということ。
努力が自信となり、自信が結果をもたらし、結果によって自信はさらに強いものになっていく。これこそが仙台がクラブとして強くなるための「方程式」であり、荒牧がキャプテンとして伝え続けていることである。
「Fリーグの上位に入るようなチームは、僕たちの大先輩がずっと積み重ねてきた歴史の上で成り立っています。1年、2年で強くなったチームはないですし、僕たちもようやく積み重ねようと動き出した段階だと思っています。なので、いろんなことを口うるさく言ったりしています(笑)」
仙台はFリーグに加入してまだ5年目。下位で低迷していた仙台は今、じわじわと成績を上げてきている。荒牧の言う通り、ようやく歴史を積み重ね始めたところだ。だからこそ、土台を支えながら、このクラブが上を目指していけるように導くことこそが、荒牧の役割に違いない。
そして仙台が強くなるということは、Fリーグのレベルがまた一つ底上げされるということを意味する。それはまさに、「日本フットサル界の強化と発展」という、荒牧の大きな目標が一つの形として実を結ぶということも、意味している。
文・舞野隼大(SAL編集部)
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