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 1957年に始まったTBS系の政治番組『時事放談』。政治評論家の細川隆元氏らをホストに据え、辛口の政治談義が人気を呼んだ。一時中断(第1期:1957~1987年、第2期:2004~2018年)はあったものの、来月30日の放送で44年の歴史に幕を閉じることになる。関係者によると「一定の役割を終えた」「ゲストの高齢化が進んだ」ことが終了の理由だという。

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 第1期は細川氏をはじめ、同じく評論家の藤原弘達氏らが舌鋒鋭く政治を語り、時には政治家をばっさりと切って捨てることもあった。1987年の第1期終了パーティーで細川氏は、「先はどうなるか分からないが(番組を)やってみようと。政治もこういうもんだろうと思う。先の先、次の次が全部分かっていたら面白くも何ともない。いい知恵も出てこない」と語っていた。

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 2004年から始まった第2期の司会は御厨貴(みくりや・たかし)氏。ゲストには中曽根康弘氏、宮沢喜一氏、小泉純一郎氏ら元総理や、野中広務氏、土井たか子氏ら与野党の大物政治家が登場し、番組内での発言が度々ニュースになった。さらに番組の収録終了後、スタジオを出たゲスト政治家を取材が取り囲む風景もお馴染みとなった。

 老舗政治番組の終了。見渡してみれば、政治番組自体が少なくなっている。これまで政治番組は若手を始めとする政治家のアピール、意見交換の場でもあった。しかし現在は各政党、政治家がホームページやSNSなど発信の場を持ち、情報発信や活動報告を行うことが当たり前になっている。さらには、国民民主党の玉木雄一郎共同代表はYouTuberを宣言し、YouTubeでの発信を始めた。

 アピールの場がインターネット、スマホへ移った昨今、テレビの政治番組はその役割を終えたのか。1日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、細川隆元氏が大叔父にあたるテレビ朝日政治部の細川隆三デスクを交え議論した。

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 細川デスクは、『時事放談』の第1期と第2期は異なるものだとし、「第1期は、細川隆元や藤原弘達のような“カミナリ親父”が出てきて永田町を叱りつけていた。それが痛快で、お茶の間に受けていたのだろう。第2期は、政治家から意見を聞いてなるべく本音を引き出そうとしていた」と説明。第2期で番組の趣が変わったことについては、「そういう(叱る)人がいないからではないか。田原総一朗さんのような、後に続く方がなかなか出てきていない」との見方を示す。

 一方、8bitNews代表の堀潤氏は「見る側に『どう変わっていくのか』『何をするのか』という、前に進むための具体的な話を聞きたいというニーズもあるのでは。御厨さんは丁寧に聞き込んでファクトを引き出して、それでどうするのかというアプローチだった」と述べた。

 地上波の政治討論番組は減ってきている。現在放送されているのは、NHK『日曜討論』(1957年~)、テレビ朝日『朝まで生テレビ!』(1987年~)など。一方、テレビ朝日『サンデープロジェクト』(1989年~2010年)、フジテレビ『報道2001」『新報道2001』(1992年~2018年)、テレビ東京『田勢康弘の週刊ニュース新書』(2008年~2016年)などが終了した。

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 地上波に限って言えば、『時事放談』が終了すると週1レギュラーの政治番組は『日曜討論』だけになる。政治番組にはどのような役割があり、またどのように変遷してきたのか。

 細川デスクは「政治はずっと続いているので、いつの時代にも(番組の)役割はある」と述べつつ、ご意見番や個性のある政治家が減ったとの見方については「永田町でも個性的な人が少なくなってきた。若い人も増えているし、ゲストのブッキングもマンネリ化してしまう」と指摘。かつての個性的な政治家には亀井静香氏を挙げた。

 細川デスクの話を受けて堀氏は、「亀井さんはぶっちゃけてくれる。『テレビで言うことじゃないけど、あれはバカだよ』とか。今はSNSで反応がダイレクトに返ってくるし、発言が命取りになることもあるので、すごく安全運転をしている印象を受ける。CMや休憩に入ると議員同士が『でもここは言えないよね』と話していて、それをオンエアでやってくださいよと。森友・加計問題で与野党の議員が一緒になっても、お互いに阿吽の呼吸でやっている」とした。

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 細川デスクも担当していた『サンデープロジェクト』。1991年8月18日に「YKK」と呼ばれていた山崎拓氏、加藤紘一氏、小泉純一郎氏が出演し、10月の自民党総裁選を前に続投ムードだった当時の海部俊樹総理に対して「断固阻止する」などと発言し、風向きを変え、海部総理が退陣するという出来事があった。『サンデープロジェクト』での政治家の発言がニュースになると、新聞も後追い取材をし、政界に影響を与える“サンプロ現象”も生まれた。

 細川デスクは「YKKが出た頃からテレビの政治討論番組の時代になった。YKKは反竹下派で、時の最高権力を握っていた竹下派に牙をむいた。今はなかなかそういう人が自民党の中にはいない」と指摘。その背景に“安倍1強”があるのかとの問いには、「視聴者がしらけているのかもしれない。『どうせ安倍1強でしょ』『野党が何を言っても法案は全部通るんだろう』と。ドキドキするものがないと見られているのかもしれない」と述べた。

 さらに堀氏は、メディア環境の変化も指摘。「『これを言わねばならぬ』『これで世論を変えるんだ』『テレビに出て1発変えるぞ』という時代ではない。SNSのアカウントを各自持っていて、討論をして打ち負かされたり、誤解を招いたり、揚げ足を取られたり、言葉尻をとらえられるようなリスクを犯すよりも、自分の好きなこと、言いたいことを(SNSで)言って支持を集めている。有能な若手の方に番組に出てほしいと言っても、すごく慎重。『僕のために何かいいことあるのか』と、なかなか出てくれない人も結構いる」と明かした。

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 小沢一郎氏の“懐刀”として数々の政治番組に出演した元参議院議員の平野貞夫氏は「昔は本音をぶつけ合い討論し、視聴者にも分かりやすかった。細川隆元さんをはじめ、学識・経験のある方が出演し、啓蒙効果があった。今は批判を気にして出演者や言い方に忖度している」との見方を示している。

 細川デスクは「我々作る側は忖度していないが…」としつつ、「田原さんには『政治家の本音にいかに迫れるか、視聴者が何を知りたいのかを追求していくんだ』と言われやっていた。そういう気持ちでやれば、今だってできるはず」と意見。堀氏は「『AかBか』という議論が成り立たないくらい、向き合っているテーマが複雑だと思う。『あんたが悪い』『俺が正しい』という時代ではなくなったのでは」との見方を示した。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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