日本代表FW武藤嘉紀がドイツ・ブンデスリーガのマインツからイングランド・プレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドへ移籍した。古豪といわれるニューカッスルとは?また指揮官であるラファエル・ベニテス監督とは?プレミアリーグ開幕前にニューカッスルについて知る。
戦術家・ベニテスは武藤加入に大きな期待
今月2日、日本代表FW武藤嘉紀のニューカッスル・ユナイテッド移籍がついに決定した。2015-16シーズンから3シーズンに渡ってブンデスリーガでプレーしてきた武藤にとっては、初めてのプレミアリーグ挑戦。また現役の日本人選手として、サウサンプトンのDF吉田麻也、レスター・シティのFW岡崎慎司に続いて3人目のプレミアリーグ所属選手となった。
さて、このニューカッスルだがオールドファンならばご存知の通り、イングランドサッカーを代表する古豪。かつてはFWアラン・シアラー、近年ではFWマイケル・オーウェンといったイングランドを代表する名ストライカーが所属したチームだ。
1893年に創設されたクラブはフットボールリーグ(現プレミアリーグ)で優勝4回、世界でもっとも歴史があるサッカーの大会であるFAカップでは6回の優勝を誇る。愛称の「Magpies(マグパイス=カササギ)」とは、クラブカラーのホワイトとブラックが、近郊を流れるタイン川に生息するカササギと似ていたためで、クラブのマスコットもカササギとなっている。
ホームタウンは、イングランド北東部にあるニューカッスル・アポン・タイン。5万人を越える収容数を誇るセント・ジェームズ・パークでは「Toon Army(トーン・アーミー=ファンの愛称)」が毎試合駆け付けてスタジアムは超満員となる。
さらに、サンダーランドとの「タイン・ウェア・ダービー」は熱狂的なサッカーのダービーマッチの1つでサポーター同士の暴動もしばしば……。また、2005-06シーズンの同ダービーでは、サンダーランドのDFフリオ・アルカがシアラーにハード・タックルを敢行。この結果、シアラーは靭帯を断裂してそのまま引退に追い込まれてしまった。シアラーは「それでこそタイン・ウェア・ダービーだ」と口にしたと言われており、それほどまでに激しい試合が常に繰り広げられる。
そんなニューカッスルは、プレミアリーグに復帰した2017-18シーズンに10位でシーズンを終えて残留に成功。降格した2015-16シーズン途中から指揮をとるラファエル・ベニテス監督にとっては、さらなる飛躍が求められる勝負のシーズンとなる。
このベニテス監督だが、これまでに数々のクラブで多くのタイトルを獲得してきた名指揮官だ。2001年から指揮を執ったバレンシアでは、クラブにとって31年ぶりのリーガエスパニョーラのタイトルを獲得。さらにUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)でも優勝を達成した。2004年から指揮を執ったリバプールではリーグ優勝こそ達成できなかったものの、チャンピオンズリーグではミランを相手に0-3の状況から同点に持ち込み、PK戦の末にビッグイヤーを掲げた「イスタンブールの奇跡」が有名である。そのほかにもチェルシー、インテル、ナポリ、そしてレアル・マドリーなど各国のビッグクラブを率いてきた。
また、ベニテス監督は戦術家としても有名。特にサイドハーフに縦への突破を得意とする選手を置くことが多く、プレミアリーグで指揮を執ったリバプール時代にはMFハリー・キューウェルやMFルイス・ガルシア、FWライアン・バベル。チェルシー時代にはFWヴィクター・モーゼスやMFエデン・アザールといったアタッカーが並べられている。
ベニテス監督は武藤の獲得についてクラブ公式サイト上で「ヨシノリ・ムトウを迎えることができて嬉しい。かなりの時間をかけて彼を追いかけていた。エネルギーと運動量をもたらしてくれるだろう。新シーズンへ向けてチームを改善してくれることを願っている」と期待を口に。
おそらくFWの位置でのプレーすることが予想されるが、サイドアタッカーとしてのプレーを求められるのであれば、それは逆に指揮官からの期待の現れといえる。ベニテス監督にとってサイドアタッカーこそ生命線なのだ。また、FWとしてのプレーならば求められるのは得点力。昨季のニューカッスルは総得点39である、これはプレミアリーグ20チームの中で13番目。上位進出を目指す上で、最も改善が必要な部分だ。
ストライカーかサイドアタッカーか。どちらにしても武藤には大きな期待がかけられている。開幕戦のスタメンを勝ち取り、是非ともゴールという結果を残してその期待に応えてもらいたい。その開幕戦では、今シーズンも優勝候補に挙げられるトッテナムと激突。相手にとって不足なし。武藤のプレミアリーグ挑戦が始まる。
予想サイトの『SUPERCHOICE』では、武藤所属のニューカッスルとトッテナムの勝者予想は7日17時現在でトッテナムが1.79倍、ニューカッスルが3.87倍とトッテナム勝利を予想する人が多くなっている。また、武藤のゴール数予想では「0ゴール」が1番人気になっているが、期待の現れか「1ゴール」が2番人気にあがっている。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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