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 「いち早く情報を届けたい、報道の支援が必要だ、という被災者の方はLINEで連絡をください」「愛媛、岡山、広島など、各地域の現場を10か所くらい回っている。それぞれ被害状況も背景も違うので、丁寧に聞き取っていきたい」。

 個人のジャーナリストとして堀潤氏がインターネットを活用して実践している取材方法だ。これを堀氏は「オーダーメイド取材」と呼び、熊本地震の頃から主に災害の現場から情報を発信してきた。

 「災害が発生すると、SNS上に"孤立している、支援物資がない。報道が足りない"といったSOSが寄せられる。それと同時に、誤った情報、思い込みの情報、伝聞に伝聞を重ねて歪んでしまった情報、悪意のあるデマなども拡散してしまうため、本当のSOSにたどり着くのが遅れてしまうこともある。そこで伝えたいことを写真や動画で送ってもらい、僕が調べて確認し、SNSで拡散していく。そしてひとりひとりのところに訪ねていって関係を築く。災害から1か月も経つと、報道の量は少なくなっていく。一方、地元では責任追及の声を挙げにくい空気もあり、報道機関に頑張ってほしいという思いがある。報道機関が社内で合意が取れて初めて取材に行けのに対し、フリーでやっている僕はすぐに行けるし、撮影技術もあるから」。

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 AbemaTV『AbemaPrime』では、西日本豪雨から1か月が経った岡山県・真備町在住の男性から依頼を受け現地に赴いた堀氏を追った。

 真備町では先月7日、町域の中心部を横断するように流れる小田川が決壊して街の4分の1以上が浸水、51人が亡くなった。今も至るところで廃棄物が山積みになっている。この小田川のすぐ近くに住む取材依頼者の男性は「なぜ避難指示が南に先に出て、北は後になったのか理解できない」と話し、避難勧告・避難指示のタイミングが本当に適切だったのかを調べ、次の災害に役立ててほしいと要請した。「堀さんのことはネットでよく知っていて、問題提起型の報道とか、大手がやらしないことも率先して報道しているので、自分が言いたいことも伝わるのではと思って」。

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 なぜ避難指示のタイミングに差が生じたのだろうか。そもそも避難指示の発令は、各市町村が国のガイドラインに沿って行っており、倉敷市では岡山県河川事務所から小田川の氾濫危険水位の情報を受け取り、避難指示を発令している。決壊の翌日、同市の河野裕・危機管理監は「本川であれば水位の状況によって早く(避難指示を)出せたと思うが、今回は小田川の支川の方だったということで、水位と堤防の関係が詳細に把握はできていなかった」と説明している。

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 豪雨の前に作成されていた真備町のハザードマップを見てみると、小田川の北側、つまり今回被害を受けたエリアには色付けがされており、浸水被害が事前に想定されていたことがわかる。しかし男性の証言にある通り、避難指示は先に小田川の南側に対して発令されていたのだ。倉敷市によると、避難指示が南側に出されたのは7月6日午後11時45分、北側がその1時間45分後の7日午前1時30分だった。それから4分後の午前1時34分、小田川と支流の合流地点が決壊。溢れ出した濁流がハザードマップの想定どおり、北側のエリアに甚大な被害をもたらしたのだった。

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 堀氏は「男性の証言によると、避難指示が出た時間帯、実際に川の様子を目視で確認しにきた職員はいなかったようだ。川の近くには櫓があり、火災などを知らせる警鐘が遺されていた。男性はこの鐘について小学校で習ったけれど、今回は鳴らす人もいなかったと話していた。また、南側ではかつての水害の経験が活きていたからなのか、氾濫した川の水を他の土地に逃がすような街の作り方をしている。その一方、北側では過去の知見が共有されないまま宅地造成が進んでいった面もあるようだ。合併して倉敷市になったので、過去の歴史的な経緯を防災に役立てているのかという疑問も持った」と話す。

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 今回の災害よりもはるか以前に建てられたという「溺死群霊供養塔」と書かれた慰霊碑。この小田川流域は過去に何度となく水害に悩まされてきた地域だ。実はこの秋に水害対策工事を行う予定だったが、今回の豪雨には間に合わなかったという。さらに堀氏は専門家への取材の結果、大きな問題が見えてきたと指摘する。

 「大きな川は国、もう少し細い川は県、そして用水路などは市町村が管理している。俯瞰して見れば"雨量やダムの放流による増水がこれだけあれば、合流地点で決壊する恐れが高まり、支流に関してはこうなる"というのが分かるが、現状の仕組みでは、国、県、市町村にまたがった一体運用がされていない。この構造的欠陥による情報連携のミスが水害に結びついた可能性もある。専門家からは市区町村にも気象や河川の専門家を置くべきだという意見や、防災省設置の議論の過程では現状の仕組みの問題点を洗い出してほしいという意見もあった」。

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 取材を振り返り「地元の人じゃないとなかなか分からない細かな状況を教えて頂いたし、次の防災にもつながることに触れられた。今後、もう少し行政側にも事実確認をして記事にしていきたい」と堀氏。「AbemaPrimeの皆さんが取材してくれたので、僕個人の発信をきっかけに大きなメディアやマスメディアによるさらに深い取材につながっていく。マスメディアと個人のメディア、マスメディアと市民が対立したり、誰かが手柄を独り占めしたりするのではなく、メディア人同士が情報を共有し、手を携えて役割を果たしていきましょうという連鎖が、"オーダーメイド取材"の理想の形だと思っている。次から次へと、回転寿司のお皿を移っていくような報道ではなくて、復興の日までお付き合いする、ということができたらいいし、やりたいと改めて感じた。忘れないためには、行動あるのみなのではないか。今後も続けていきたいので、情報発信の支援が必要な人は連絡をしてほしい」と呼びかけた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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