北朝鮮の完全なる非核化が実現するのかと世界中が期待した米朝首脳会談。しかしあれから2か月、非核化へのプロセスを示せないまま、米朝関係は膠着状態に陥っている。経済制裁を解かない限り非核化を進めないとする北朝鮮。一方、完全な非核化が実現しない限りは制裁を維持するとの意向を示しているアメリカ。両国の主張は真っ向から食い違ったままだ。そんな中、北朝鮮と韓国は3度目の南北首脳会談を来月9日に行うことで合意している。
「北朝鮮が核・ミサイル能力を低減させたという事実はない。むしろアメリカの情報機関や民間研究機関からは"能力をさらに増強している"という評価が出てきているのが現状だ」。
14日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した、NPO法人「岡崎研究所」研究員の村野将氏はそう指摘する。
「ミサイルが破棄されたという証拠は何もない。7月末に出てきた情報によると、北朝鮮はICBMの製造施設を稼働させていて、1~2発の増産を行っている。また、日本が射程に入る中距離弾道ミサイルの移動発射台の数を増やせるよう準備したり、固体燃料の製造施設を拡張したりしている。北朝鮮は20~60発の核弾頭を製造していると言われており、軍事用の核物質が増産されていることも読み取れる。国交正常化交渉は、すでにある核と、製造施設や関連部品を国外に搬出し、それを客観的に検証した後で行うのが一般的だ」。
また、アメリカの動きについて村野氏は「13日にはアメリカ国務省のハリー・B・ハリス・ジュニア韓国大使が講演で"非核化が進展している中で終戦宣言の在り方に言及するのは早すぎる"と釘を刺した。外交・国防当局は"終戦宣言に関しては前のめりになるな"とブレーキをかけている印象だと指摘」する。
「そもそも今の米朝交渉は北の"体制保証"をキーワードにしているが、そもそも体制保証していいのかという疑問があってしかるべきだ。これまで日本や韓国、アメリカの国民に対して北朝鮮がしてきたことを考えれば、体制を存続させることは道義的に正しいのかという疑問も当然湧いてくる。現実問題、金正恩委員長や主導部を殺害する斬首作戦のようなものもあるのが事実。ただ、金正恩を排除したあとに出てくる次の指導者が交渉するに足る人物かどうかわからないという判断のもと、少なくとも現状では対話の相手は金正恩、コンセンサスになっている。だからボルトン補佐官は強硬なことを言ってきた。それは政策としては実現不可能かもしれないが、どこまで政策の実行に繋げていけるか。10年、20年先の北朝鮮情勢を考えていく上で、そこは落としてはいけないところなのではないか」。
そんな状況下で、北朝鮮との首脳会談に前向きな姿勢を取り続ける韓国。「リアルメーター」の調べによると、4月27日の南北首脳会談直後には約80%あった支持率は約22%も低下している。背景には「最低賃金の引き上げに伴う混乱」「猛暑を受けた電気料金値下げ策が期待外れであること」「大統領選で側近が"SNSで世論操作"暴露」北朝鮮からの石油密輸が発覚した「親北路線への批判」など問題があるという。
村野氏は「南北の融和ムードをこれからも継続して、ゆるやかに朝鮮半島の平和体制を築いていこうということではアメリカも一致しているとは思うし、日本も冷静な行動を取っていると感じている。ただ、日本にとっての安全保障問題が全く改善されない中で、いつ北朝鮮との緊張状態に向き合うのかということが問われてくる。トランプ大統領が北朝鮮に過度に融和的になってしまっている時に、いかに冷静な助言をしていくのかが焦点になってくる」との考えを示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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