今季、湘南ベルマーレから立川・府中アスレティックFCに加入した上村充哉。全日本選手権で涙の別れを告げた古巣との初対戦を終えて、どのような感情があったのか――。
湘南を離れてでも代表でプレーしたい
「特に意識はしていませんでした」
立川・府中アスレティックFCに今季から加入した上村充哉は、古巣である湘南ベルマーレとの初対戦を振り返ってクールに語った。
今年3月11日に東京の駒沢オリンピック公園総合運動場体育館で行われた全日本フットサル選手権の3位決定戦で、湘南はバルドラール浦安に勝利して3位で大会を終えた。試合前に退団を発表していた上村の姿はピッチになかったが試合後、他の選手とともにサポーターに挨拶に出てきた。
そこで起こったサポーターの上村や他の退団する選手たちへのコール。さらには横断幕も掲げられ、上村は感極まって涙をこぼした。下部組織であるロンドリーナから所属し、チームのキャプテンにも任命されたが結果を残せず悔しさもあったが、それでも暖かく送り出してくれるサポーターたちに深々と頭を下げて別れを告げた。
そんな感動的なひと幕があっただけに、どうしても冒頭の上村の言葉は腑に落ちなかった。もう一度古巣への思いを聞いてみると本音を打ち明けた。
「もちろん今でも大好きなクラブです。ただ、もう一度、代表に入ってプレーしたくて、そのためにはチームでの結果が大事です。府中に移籍したから試合に出られるとかではないですが、何かを変えないといけないと思い決断しました」
上村は2017年3月に行われた日本代表の欧州遠征に向けた国内合宿に初めて招集された。同年8月に行われた第5回アジアインドア・マーシャルアーツゲームズでは25歳以下で構成された代表チームでプレーしている。しかしその後は湘南で出場機会を失い、それと同時に代表チームにも招集されなくなった。
上村といえば、アウトレンジからでも決められる強力なシュートが武器。本人も「日本人にはアウトレンジからのシュートを打つ選手が少ないですが、僕は10mの距離ならば決める自信があります」と口にする。
上村とはロンドリーナ時代からともにプレーし、日本代表の先輩でもある湘南の内村俊太も「湘南でもシュートのうまさがありました。相手の視界から消えてもらう動きもうまいです」とオフェンス面を高く評価。しかしそれでも湘南では出場機会を失ってしまった。
日本人に少ない特徴を持ち、攻撃のオプションとなりえる可能性を秘めているが、上村に足りないものはなんだろうか――。
上村は「フィジカル」を真っ先に挙げた。40m×20mの狭いコートの中で繰り広げられるフットサルにおいて、フィジカルの強さは基本的なもの。しかしまだ発展途上の21歳。谷本俊介監督もリーグ開幕前のオーシャンカップで「体は未完成な状態ですが、フィジカルは立川・府中の伝統。そこは意識が高いので、彼に足りない部分がトレーニングされていけばもっと良くなると思っています」と今後の成長に期待する。
伝統的にフィジカルが強い立川・府中で絶対的な存在となれれば、「大好きなクラブ」を離れて目指した日本代表も見えてくる。上村の新たな挑戦は始まったばかりだ。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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