
ゲームの腕前は人並み。加えて、極度の機械音痴。にもかかわらず、人気のゲーム配信者がいる。名前は加藤純一(33)。医療従事者でもあった加藤が、ゲーム配信に興味を持ったのは22歳の時だったという。
「ゲーム音楽を自分なりにアレンジし、歌詞をつけて上げていたヒャダインさんの動画を見て『面白そうだ』と思ったのが22歳の時。ヒャダインさんの他の動画を検索していたらニコニコ動画のサイトにたどり着き、色々な方の動画を見ているうちに『自分の方が面白く出来そうだ』と思って始めました」
「うんこちゃん」を名乗って2009年から始めた動画配信は、徐々に視聴者数を増やした。2015年には配信が忙しくなり、本業の休み、日々の睡眠を配信に充てるという「二足の草鞋」スタイルも限界に達した。そんな時、院内に「突然、加藤純一が変わってしまった」という噂が広まり、当時勤務している病院の院長から呼び出された。正直に打ち明けると、院長の反応は意外なものだったという。
「そういう状況になるということは、気持ちは決まっているはず。この先も二足の草鞋を履くのは難しい。病院を選ぶことは無いのだろう?」
この一言で、独立を決意。2016年夏、晴れて離職してゲーム配信者として勝負に出た。

ゲームの腕前は人並みで機械音痴 あるのは情熱
本人も認めるように、ゲームの腕前は人並み。さらに機械音痴だったこともあり、前途は多難だった。
「基本は機械音痴なので、視聴者さんに聞いたりして動画を編集していました。今考えると、よくできたなぁと」
プレイスタイルは「全力」。喜怒哀楽をゲームにぶつけ、とにかく喋る。しかも大声で。ただ、その「叫び」が、ゲーマーの心を代弁し、妙に的を射ているので不快感はゼロ。共感が深まり、また見たくなる。それが、加藤の魅力。配信前から、こんなプレイスタイルだったのか? そのことについて本人は次のように話す。
「それじゃ、頭がオカシイみたいじゃないですか(笑)。基本は黙って、ただ友だちと集まってゲームするときはそれなりに盛り上がっていましたよ。ごくごく一般的です。その点、 僕はゲーマーではないんですよね。特別ゲームが好きということではなく、それこそ、1カ月やらないということも。友達と集まったときなんかは、ものすごい長時間やり続けることはありました。友達と一緒に楽しむ、遊ぶツールがゲームだったという感じです」
“ゲーマーではない”加藤を夢中にさせたゲーム配信の面白さについては。
「今ほど技術が優れていない昔のゲームは、主人公がドットで表現されているので、表情や動きが不自然だったり、描写や説明が不十分だったりしますよね。そのときに『ここ粗いよね?』とか突っ込んでみたり、勝手な設定で解釈してみたり、ただイジってみたり。自分がゲームに抱く不思議な感情や面白さをみんなと共有できるって、スゴイ事じゃないですか? ゲーム会社的には迷惑だと思うんですけど(笑)。思春期の頃って、夜寝る前に勝手な設定でストーリーを作って妄想したり、よくやったりしますよね? その延長線上で視聴者の皆さんと楽しんでいる感覚です」

よゐこ有野が演じる「有野課長」との共演が目標
2016年に独立、人生の大きな決断を下した加藤。安定した道を外れ、自ら不安定な世界を歩み始めた今、手応え、確信のようなもの掴むことができたのか。
「未だにありません……。当初から叩かれていたし、常に大丈夫ではなかった。もちろん、今でも(笑)。でも、大丈夫でないことが当たり前なので、ある意味大丈夫。放送もそうですが、上手く行くことの方が少ないんで。ただ、いい時はすごくいい。野球が好きなんですけど、ホームラン打者タイプなのかもしれません。ホームランは多いけど、三振も多い。打率的には1割くらいじゃないですかね……」
そんな加藤に、ゲーム配信者としての強み、個性を自己分析してもらった。
「ゲームが上手なわけではありませんが、『マジで向き合う』ことに関しては、心の底から“世界一”だと思っています。自分がこうだと思ったら、10時間、20時間でも平気でゲームをやり続けますからね。例え、その方法が間違っていたとしても(笑)。逆に、僕以上の情熱を持った人がいるなら、ぜひ対談でもしたいくらいです」
そんな加藤には、同じ世界の先輩として憧れている人物がいる。それは、お笑いコンビ・よゐこの有野晋哉だ。有野は2003年からフジテレビONEで放送されている『ゲームセンターCX』で有野課長(有野晋哉)として出演。懐かしゲームのエンディングを披露すべく、ゲームと向き合っている。
「芸能界のような華やかな世界とは対極にある、ネットの世界という空間の面白さ。決してゲームが上手なワケではないのに、まるで友達と楽しむようにゲームを楽しまれているので、肩ひじ張らず観ることができる。ゲームに向かって話すことに関しては、ある意味ゲーム配信の先駆者ではないかと思っています。有野さんとの共演は目標。私の強みは、前述したように耐久性です(笑)。別に意図的に「何時間やろう」というわけではないのですけどね。『体に悪くない?』と聞かれますが、「好きなことをやっていて身体に悪いわけがない」と思っています。僕にとってゲームの時間は、至福の時間なんです」
最後に、ゲーム配信者としてのこだわりを聞くと、いかにも加藤らしい答えが返ってきた。
「ゲーム中にあくびをしないことです。自分が配信を見る立場、応援する立場だと考えれば、全力でやってこそ『応援しよう』と思える。だから絶対にあくびはしない。いつ、誰に見てもらっても、全力の自分を観て欲しい。例えば、夜勤を終えた人が楽しみに配信を観てくれた時、僕があくびをしていたら絶対にがっかりする。そういう裏切りだけはしたくない。“金太郎飴のようなテンション”が私の信条です」
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