Fリーグ選抜の10番、鬼塚祥慶。左右どちらの足も遜色なく使えるドリブラーであり、平均年齢20歳の若いメンバーの中で、その技術は群を抜いている。7月8日に行われたDUARIG Fリーグ2018/2019 ディビジョン1の第4節、アグレミーナ浜松戦も、ドリブルを起点に1ゴール1アシストと勝利に貢献した。ピッチ上で、まさに“鬼気迫る”プレーを見せる鬼塚とは、どんな選手なのだろうか。
原点はフットボールの本場・スペイン
開幕3連敗で迎えたホーム開幕戦。無得点のまま互いに攻め切れないでいた前半終了間際、鬼塚がドリブルで駆け上がってシュートを放つ。一度は相手にブロックされたが、跳ね返りを再び打ち込むと、前にいた新井裕生の体に当たって軌道が変わり、ゴールへと吸い込まれた。
この先制点は、チームを勢いづけた。後半にギアを上げたFリーグ選抜は、4点を加えて5-0で快勝。今シーズンから2年間限定で組織された特別なチームであり、他の11チームとの力の差は明らか。周囲からは「1勝もできないまま終わるのではないか」という声も聞こえていた。だが彼らは、そんな雑音を消し飛ばした。
鬼塚は終盤、相手GKが攻め上がり無人となったゴールへ、今シーズン2点目を蹴り込んだ。1ゴール1アシスト。彼は開幕戦でも、2016シーズンのFリーグ王者・シュライカー大阪を相手に痛快なドリブル突破からゴールを挙げていた。目に見える数字はもちろんだが、この試合で改めて、ドリブルという自分の最大の武器がトップの舞台で通用することを示した。
「左右両方の足で蹴れるので、(右サイドから)縦に行くフリをして、中に行って左で持つこともできるし、逆に中に行くフリをして、右足で縦に突破することもできる。どちらに行くのか読めないドリブルがあるからこそ、相手のマーカーを惑わすことができているのかなと思います」
ピッチで存在感を放つ鬼塚は20歳だが、特徴的なキャリアを持っている。
「向こうはフィジカルが強いですし、(フィジカルの質も)まったく違う。そういった中で自分はどういうプレーができるのかということをすごく痛感しました」
11歳の時に、サッカーでプロ選手を目指すためにスペイン留学をしたのだ。その後、3年間はサッカーを続けたが、スペインはサッカーの本場であると同時に、フットサルの本場でもある。14歳でフットサルに出会うと、それから18歳までの4年間は、世界最高峰といわれるスペイン・フットサルのメソッドを学んだ。
帰国後、鬼塚は名古屋オーシャンズサテライトに加入した。
「スペイン人はすごく闘争心が強いですし、試合になるとまるで人が変わるんです。そういった部分も実際に体験してきたことで、自分自身にもそういうメンタリティーが身についたのかなと思います」
本場で学んだのは技術だけではなかった。確かに鬼塚は、ピッチで“鬼のような形相”でプレーしていることがある。ドリブルは最大の武器だが、どんな局面でも気持ちを前面に出して、その姿で味方を鼓舞しているようにも見える。だが試合が終わると、一転して穏やかな表情をのぞかせるのだ。
技術とメンタリティー、それに海外で培ったハングリー精神もある。では、鬼塚に何が必要なのか。もちろん、それらすべてはこの先も伸ばしていく必要がある。だが今、彼自身が欲しているのは「キャリア」だろう。
「Fリーグ選抜では出場時間も長いですし、自分が中心になってやることが当たり前なので、そういう経験を次でも生かしたいと思っています」
彼のいう「次」とは、Fリーグ選抜でレベルアップしたその先のことだ。今はまだ、所属元が名古屋オーシャンズ“サテライト”の選手であり、“若手チーム”の中心でしかない。いずれ自分は“名古屋オーシャンズ”の、“日本フットサル”の中心となる──。そんな決意が、鬼塚の言葉の裏には隠されている。
トップレベルで通用することは証明できた。次はそれが、より上の舞台でも武器になること、そのプレーでチームを勝利に導けること、そして、日本に不可欠な選手だと証明すること。鬼塚はここから、さらに駆け上がっていく。
文・舞野隼大(SAL編集部)
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