居反りなどアクロバティックな相撲で観客を沸かせ、金星も獲得した宇良が丸1年ぶりに土俵に帰ってきた。前頭四枚目だった昨年秋場所、右膝の負傷で途中休場し、患部の手術に踏み切った。その後は地道なリハビリに励み、もともとストイックな性格だけに徹底した筋力トレーニングで自身をとことん追い込み、体つきは全体的に一回りも二回りも大きくなり、まるで別人の姿で戻ってきた。
6場所連続休場で番付は一気に降下し、今場所は序二段も近い三段目九十一枚目。1年ぶりの実戦に「すごい緊張した。不安しかなかった」と語っていたが、立ち合いで思い切り当たると左からのいなしで相手の体勢を崩し、最後は右を差して寄り切る危なげない相撲で復帰戦を白星で飾った。
変幻自在の動きで相手を翻弄する相撲がかつての持ち味だったが、小兵ゆえに大型力士に攻め込まれると、どうしてもケガのリスクがつきまとっていた。復帰後の見事なまでにパンプアップされた肉体は、そんな弱点を克服することが何よりの目的だったに違いない。それでいて、この日の相撲を見る限り、スピードが損なわれることはなさそうだ。
8月中旬から相撲の稽古を再開し、勝負勘も徐々に取り戻していった。順調にいけば三段目優勝の最有力候補ではあるが「ケガをしないように場所を乗り切りたい」と慎重な姿勢を崩さない。力士の大型化が進むにつれ相撲も大味で淡白なものになりがちだが、そんな状況に対応しつつも唯一無二の個性が光る“新生宇良”の相撲は、来年中には幕内で見ることができそうだ。
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