ロベルト・カルロスを擁するFリーグ選抜との一戦に臨んだヴォスクオーレ仙台。結果はレジェンドの「勝負強さ」を痛感する2失点で悔しい敗戦となった。同じピッチに立ち、一時は仙台の同点となるゴールを奪った堀内迪弥は今までとは違う今回の一戦で、一体何を学んだのだろうか。
違いをつくるのは「メンタリティ」
2018年9月9日(日)はFリーグ界にとって歴史に残る日となった。元ブラジル代表DFのロベルト・カルロス(45)がFリーグ選抜の一員として公式戦に出場。リーグの最年長ゴールとなる先制点をマークするだけでなく、決勝点も決めた。ロベカルがピッチに立ったのはわずか6分36秒。たったそれだけの時間でも、会場で見た3,015人のファンやサポーター、そして過去最高の視聴者数を叩き出したAbemaTVで観戦した人たちにも衝撃を与えた。
大いに盛り上がりを見せた今回の一戦だが、勝負の世界で勝者がいれば敗者がいるのは当たり前。普段とは違う難しいシチュエーションの中での試合を強いられ、惜しくも敗れたヴォスクオーレ仙台にとっては大きなダメージが残る一戦に。仙台の堀内迪弥にとっても苦い経験となったかもしれない。
普通ではない今回の一戦に向けて堀内は「Fリーグの意地というか、僕たちはずっとフットサルをしていて、いきなり来た選手に負けたくないという気持ちでトレーニングをしていました。いつもとは違うモチベーションでしたし、意識もしていました」と、試合前から普段とは違う戦いになることは十分にわかっていた。
しかし気負いすぎることはなく、むしろ「ロベルト・カルロスが来ることで、メディアやお客さんが多い中での試合になることは頭に入っていました。そこで良いプレーをすれば知名度が上がる。それは自分のためだけでなく、チームのため、そしてリーグのためにもなると思っていました」と、この状況を楽しむかのようにピッチに立った。
ところが、実際は改めてレジェンドの勝負強さを痛感することになった。「試合前の挨拶の時からすでに汗だくで、本当に動けるのかな」と思っていたが、それでもロベルト・カルロスは試合を決定付ける2つのゴールを奪ってチームの勝利に貢献した。一方の堀内は一時同点となるゴールを奪い、今季11ゴール目で得点ランキングでは日本人トップをキープしている。それでも「ずっとフットサルをしている」堀内は、「いきなり来た選手」に敵わなかった。
悔しい気持ちを押し殺して堀内は、ブラジルのレジェンドとの違いを「メンタリティ」と分析する。
「勝負強さを感じましたね。ワールドカップで優勝し、レアル・マドリードでも活躍して、メンタリティというか。勝負を決めるところを知っています。また、これだけ注目された中にブラジルから1人でやって来て、しっかりと魅せて勝つ。日本人だと遠慮してしまうところですが、消極的になるようなことはなかったですね」
このメンタリティに関して、今季の堀内も強く思っていることがある。それは「もういい試合で終わらせてはいけない」ということ。「このリーグに所属している以上、結果にこだわる必要がある」と強く思っている。そのためにも「自分はゴールにこだわる。それが自分の仕事で、ピヴォとしてチームを勝たせるためにゴールを決める」と強い気持ちを持ってピッチに立っている。
であれば、やはり同点止まりのゴールでは物足りない。スポーツ界の共通認識だが、「たら、れば」の話をしても仕方がない。しかし仮に堀内が勝ち越しゴールまで奪っていれば、当然試合は違った展開になっただろう。堀内自身もそこは痛感しているはずだ。だからこそ、この試合を勝った負けただけで終わらせず、肌で感じた本物の「メンタリティ」を経験できたことを今後に生かしてもらいたい。
Fリーグでは安定してゴールを奪えるようになり、日本代表にも選出されるようになった。ただ、“ヴォスクオーレ”のエースから“日本”のエースとなるためには、もう一皮剥けなければいけない。また、メンタリティと簡単にいうが、それは一朝一夕で身につくものでもない。ただ、ロベルト・カルロスと対戦したこの経験はきっと財産になるはずだ。選ばれたものにしかできない今回の経験を、今後に向けてどう生かしていくか――。これからの堀内迪弥の成長がとても楽しみだ。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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